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角田柳作記念国際日本学研究所
所長 李 成市

国を超え世界規模で人と情報が行き交うなか、私たちは、日々の生活レベルにまであらゆる国の文化を取り込んで新たな文化を育んでいます。じつは、人と人、文化と文化が互いに影響し合い独自の新しい文化が形成されてゆくこの変化は、これまでの日本の歴史上、江戸時代にあっても、常にたゆまなく続けられてきた文化形成の営みです。しかしいま、グローバリゼーションは加速して、変化のスピードは格段に上がっています。真にグローバルな視野から日本文化をとらえなおし発信することが強く求められています。

「角田柳作記念国際日本学研究所」は、国際日本学研究ネットワークの世界的拠点として人文学分野における日本学研究の発信と交流を推進するため、早稲田大学総合人文科学研究センター内に開設されました。

早稲田大学は、2014(平成26)年度「スーパーグローバル大学創生支援事業」に採択されました。この事業は、世界トップレベルの教育研究実績を有する卓越した大学との連携によって先導的試行に挑戦し国際化を牽引する大学を重点的に支援するものです。「角田柳作記念国際日本学研究所」は、早稲田大学におけるスーパーグローバル大学事業モデル拠点のひとつとして、人文学分野における国際日本学の窓口となることが期待されています。

研究所に冠した角田柳作(つのだりゅうさく〔1877-1964〕)は、早稲田大学の前身である東京専門学校文学科において、アーサー・ロイド、坪内逍遥に学び、卒業後は中学校教員などを経たのち米国に渡り、1928年には全米で初めての日本文化センターをコロンビア大学に設立。1931年から1962年までの31年間、コロンビア大学の教壇に立ちました。ドナルド・キーン氏が、「角田先生と言わずただ“Sensei”と言えば角田先生のことを指す」と言うほど、柳作の功績はコロンビア大学において語り継がれています。
柳作は、日本の近代化の途上にあった激動の時代にあって、政治、社会、文化、宗教など多方面から日本社会に誠実に向き合いました。英語に堪能であったばかりでなく、日本の古典にも明るく、該博な知識でコロンビア大学の学生たちを魅了したと言われています。後年、柳作が冗談めかして、「日本の方々も、日本研究のためにコロンビア大学にお出でください」と語るほど、遠くアメリカから日本を正視しようとした確固たる教育理念にもとづき教鞭をとり、多くの後進を育成されました。
日本学の発信と研究教育の交流を推進する私たちの研究所に柳作の名を冠するのは、今から80年以上も前に、このような日本学研究のグローバル化に取り組んだ柳作に、私たちが取り組む課題達成のための原点を求めているからに他なりません。
「角田柳作記念国際日本学研究所」は、コロンビア大学東アジア言語文化学部およびUCLAアジア言語文化学部との連携を中核として、研究教育両面の活動を推進します。
国際日本学の世界標準研究モデルの世界展開推進、国際基準の大学院教育を行う新コース設立、日本文化を世界に正しく発信する人材を育成する学部教育プログラム設立、自在キャンパス構想に基づく教員・学生のシームレスな交流、国際共同研究および国際シンポジウムとワークショップの実施、バイリンガル出版など、様々な活動に取り組んでまいります。そして、国際日本学における世界の優れた研究者による研究アライアンスを構築し、早稲田大学を母港に世界規模で活躍する研究者と学生を結ぶ「知の回遊システム」を実現します。

日本は、千数百年におよび日本語というひとつの言語によって連綿と引き継がれた文献と資料を継承するユニークな文化を有しています。また一方で、そうした文献と資料に依拠する日本の人文学研究には、学問分野としてのたしかな普遍性が存在します。そのようにして蓄積されてきた普遍性ある題材を、ひとつひとつの固定化された所産の集積として静的に捉えるのではなく、世界の多様な文化との関係の中で生成と変容を続けるプロセスとしてダイナミックに捉えることは、世界の文化ネットワークの中での日本文化の位相を追究することにつながります。私たちは、そうしたアプローチにより、絶え間なく生成と変容を続ける日本文化を、日本語だけではなく英語でも発信して、世界の国々における新たな日本文化像構築に貢献するとともに、これまでにない文化価値の創造に挑戦していきます。