ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

WASEDA RILAS JOURNALの羽音のようなほんの些細な風の音の内に、自転する地球そのものの狂い(日常的生の変調)の兆候を聴きとることができるかもしれない。つまり環境世界のかすかな音たち(着信音、換気扇の音、モーター、排気音……)に聴きいる経験が、時間的・空間的にはるかに隔たった遠い出来事に直結していることに、またその無限の連鎖に、気づくのである。そのときわたしたちは、安定した「大地」(フッサール)であるかに思われていた生活世界が、ほんの薄衣(うすぎぬ)一枚を隔てて、禍々しい暗がりに接していることに「驚く」。以上、きわめて抽象的な理論面の考察しかおこなわなかったが、たとえば聞くこと、聴取に関わる具体的実践例としては、サウンドスケープをはじめ、ジョン・ケージ以来のさまざまな試みのうちに、これまで述べてきた議論の具体化を見てとることができるかもしれない。だが、その点に関する検証はつぎの課題としたい。16