ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌
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RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌
徳川家康の駿府外交体制(19)208反し、金銀貨は一レアルたりとも流出することなく、将来も亦し然るべし、その理由の一ハ、彼の国に於ては金銀多くして、その求むるところは、彼の地に缺乏せる商品のみなることなり、又一の理由は、この地のペソは、彼の地のペソと同価に通用するを以て、八レアルに当る一ペソ毎に、約一レアルの損を生ずる事なり、今よくこの問題を攷究して、国家の利益を図るに、多額の銀のこの地方より、支那に向ひて流出することを防ぎ、又支那商品の缺乏することなからしめんの為めには、支那の商品は、日本を経て、新イスパニヤに輸入せしめ、その売上高は、銀貨にて持ち帰らず、羅紗、粗羅紗、カルサイ、ペルペトアン、駱駄の毛織物、薄き羊毛織物、オランダの麻織物、ルーアン(フランス)の錦織物、イスパニヤの麻織物、毛布、絹物類、カステリヤ(スペイン)及びミラン(イタリア)の織物、葡萄酒、乾葡萄、アメンドー、薬種類、鏡、製革、其他、フランデル地方(フランス領、現ベルギー)の珍奇なる品を携へ帰らしむべし、右の商品は、日本に於ては多くの価格を有するを以て、この貿易に従事する商人は、日本に於て、右の諸品を販売し、その売上高を以て、絹、その他、支那商品の買入に供し、之を新イスパニヤに於て販売して、二重の利益を得べし、然も之が為め、国外に一レアルの流出をも見ることなく、イスパニヤの税関に於ては、輸出税の収入を増加し、新イスパニヤに於ては、売買盛なるが為め、国庫の収入を増加すべし、又、日本貿易に従事する商人は、自ら船を造るに至るべく、日本に於て、支那の商品の需用増加するに連れ、之を輸入するマニラの人、及び、マカオのポルトガル人の利益も、亦、増加すべし、而してこの買入は、日本の金銀を以てし、更にイスパニヤの貨幣を出すことなし、(下略)スペインは、国益と貿易の便宜のために、メキシコにおいて努めることは、商品の輸出入の際に金銀の流出を防ぐことである。現在、中国との貿易において金銀が多くメキシコから流出する。日本との貿易においては金銀の流出がない。その理由の一つは、日本には金銀が多くて、日本が求めているのは欠乏している商品のみである。もう一つの理由は、為替上、スペイン側が損するので、これからよく攷究して国益を図るに、多額の銀がメキシコから中国に流れることを防ぎ、中国商品を欠乏させないためには、中国商品は日本を経てメキシコに輸入し、その売上高は銀貨にてスペインに持ち帰らず、ヨーロッパ諸国から品々を仕入れて、それをメキシコに持ち帰らせる。これらの商品は日本で多くの利益が得られるので、この貿易に従事する商人は、日本で販売し、その売上高で絹やその他の中国商品を買入し、これをメキシコで販売し、二重の利益が得られるだろう。このような利益のため、メキシコの外に一レアルの銀も流出することなく、スペインの税関においては、輸出税の収入を増加し、メキシコにおいては、売買を盛んにするため、国庫の収入が増加するだろう。また日本貿易に従事する商人は自ら船を造り、日本で中国商品の需用が増加するにつれて、中国商品を輸入するマニラ人、及びマカオのポルトガル人の利益も、増加するだろう。こうしてこの買入は、日本の金銀をもって支払い、スペインの貨幣をつかうことはなくなると述べている。スペインは浦賀港を通じて中国との貿易を企てていたのである。日本側もそれを承知していたと考えられる。こうした貿易構図は上記のように図示できる。スペインは、既存の中国貿易においてメキシコ銀が多量に流出することはスペインの国益にとってよくないと思っていた。中国に流れていくメキ日本(長崎)中国メキシコスペイン日本(浦賀)ルソン(マニラ)・マカオ中国商品中国商品メキシコ銀中国商品の販売利益日本銀日本銀中国商品中国船の来航中国商品ヨーロッパ諸国の商品ヨーロッパ諸国の商品日本人スペイン人日本とスペインの貿易の流れ