ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌
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RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌
聖母よ、御腕を支えん除いたすべてが「シラ書」で言及されている。言及されない3名のうち2人は祭司(ザカリアを洗礼者の父として)であり、フルのみは祭司でもなく、「シラ書」で触れられることもない。なぜこのマイナーな預言者がアロンの次、メルキゼデクの前という重い場所に置かれているのかを論ずるのが、本稿の主たる意図である。ヤコブの12人の息子しかしその前に、残った人物を見てしまおう。15の士師ギデオンを除いて、10~14、23~29の12人はヤコブの息子であると考えられる(創35:23-26、出1:2-5、【図4】)。9に描かれたヤコブは、美しい娘ラケルに恋をするが、その姉レアとも結婚する。レアは多産で、ルベン(25)、シメオン(26)、レビ(27)、ユダ、イサカル(希:Issachar、11)、ゼブルン(希:Zeboulon、12)を産む。末子ディナは女性なので、フレスコには登場しない。不妊に悩んだラケルはしかし、ヨセフ(23)、ベニヤミン(24)の二子を得た。ヤコブはまた、レアの召使いジルパによってガド(14)とアシェル(希:Aser、28)を儲ける。ラケルの召使いビルハが生んだのはダン(29)、ナフタリ(希:Nephthali、13)の二人である。10のメダイヨンは銘文が?落して読めないが、ヤコブの子12人のうち、ただ一人登場しないユダがここに当たることは間違いないだろう。母を同じくする者が近く、もしくは対の位置に極力来るように配慮がなされている。ユダが父ヤコブにいちばん近いのは、マタイの系図(1:1-16)によっても、ルカの系図(3:23-38)によっても、キリストの先祖とされるからであろう。聖堂装飾におけるヤコブの12人の息子は、現存する限りペリブレプトス聖堂が初出であるが、後続の作例はある。コンスタンティノポリスのコーラ修道院は、帝国宰相テオドロス・メトキティスによって壁画装飾が行なわれた(1316-21年)。エクソ(外)ナルテクスの南ドームは南瓜様に15の区画が設けられて、キリストの祖先を配するプログラムであるが、その下段にはヤコブの息子12人が揃っている【図5】21。ヤコブはのちにイスラエルと名を改め、12人の息子はイスラエルの十二部族の祖となった。当然のことながら、教父による聖書解釈の伝統ではこれがキリストの十二使徒を予型することになる22。旧約は12という数を象徴的に用いることが多いが、就中重要なのは、「モーセは主の言葉をすべて書き記し、朝早く起きて、山のふもとに祭壇を築き、十二の石の柱をイスラエルの十二部族のために建てた」(出24:4)との一節である。「出エジプト記」24章以下は、モーセが神との間に契約を締結する物語で、幕屋とその備品に関して詳細な取決めがなされる。そののちにモーセは、神から十戒の石板を受けとる。これらの情景は、「モーセとアロンの幕屋」(東壁北側)と「十戒を受けとるモーセ」(西壁中央)図4ヤコブの息子たち21