ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

文化的景観の危機と再生深まっていった。とりわけ日本の研究者の心を捉えた人として、アナ─ル学派の創立に関わったストラスブール大学教授のマルク・ブロック(1886~1944)を上げておきたい。『フランス農村史の基本性格』は1959年に日本語訳が刊行され、悲劇的な生涯と相俟って日本のムラ研究に大きな影響を与えた。?信濃史学会という長野県の地方史研究学会がリードして、ムラの景観を重視する全国大会を連続的に開催した。ここに参加していた、東京大学教授石井進氏は、この大会にヒントを得て、東京大学史学会日本史部会にシンポジウム形式を導入し、中世史の地域研究を大きく発展させた。海老澤「コラム歴史の風田染荘小崎への招待」(史学雑誌120-1、2011年)参照。?条里制水田プラス荘園村落遺跡を「広域水田遺跡」と規定した。?この実施計画図自体が「圃場整備事業に対する宣言」のうち、「耕地の微地形」、「道路」、「用水堰」等の記録保存を達成していることになる。?大分県立宇佐風土記の丘歴史民俗資料館編『豊後国田染荘の調査』Ⅰ・Ⅱ(1987年刊)参照。?海老澤衷『荘園公領制と中世村落』(校倉書房、2000年)参照。?同年、石井進氏を会長とする棚田学会が発足した。?この間の状況については、海老澤衷・服部英雄・飯沼賢司編『アジア遊学153重要文化的景観への道─エコ・サイトミュージアム田染荘─』(勉誠出版、2012年)に詳しい。?菊池真純『農村景観の資源化における動態的保全─中国広西龍脊棚田地域を事例に─』(早稲田大学出版部、2012年)? 2011. Cultural Landscape of Bali Province: The Ministryof Culture and Tourism of the Republic of Indonesia,TheGovernment of Bali Province.?クリフォード・ギアツ著小泉潤二訳『ヌガラ─19世紀バリの劇場国家─』(みすず書房、1990年)81頁。1980年に原著が刊行されると、日本の人文学系の研究者はこの書に関して熱く語り合った。だが、「劇場国家」が有する政治の演劇性が論点となり、ギアツが注目したムラの重要性については深く論究されることはなかった。海老澤「「バリ島」イメージの形成と日本」(『講座水稲文化研究Ⅳバリ島研究の新たな展開』(早稲田大学水稲文化研究所、2008年)。?注?参照。?エコミュゼのエントランスにある掲示によれば、その生い立ちと概要は次のようなものである。1971年に、若い学生集団がアルザス地方の劣化しつつある建築遺産を保存する計画をスタートさせた。これがアルザスの農家を保存する運動の端緒となったのである。1980年には、ウンガースハイムに10haの土地を得て、ドイツの野外博物館の精神のもと、環境博物館を建設することになった。1984年6月1日にはフランス北部のオーラン地域全体の援助を得て、「アルザスのエコミュゼ」がオープンした。72棟の建物が存在し、アルザス地方の伝統的な建築物を紹介するとともに野生の生物が生息するビオトープを含むものであり、単なる博物館ではなく、一般的な景観を見せる庭園でもない。そこには「ミクロコスモス」が存在するのである。200人以上のボランティアと50人に近い館員によって運営されている。?ストラスブールの教会と町並みは世界遺産であり、コルマールも国家的な保護を受けている。?『アジア遊学153重要文化的景観への道』(勉誠出版、2012年)79