ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

WASEDA RILAS JOURNAL NO. 2 (2014. 10)ユダの銀貨と慈悲の施しユダの銀貨と慈悲の施し──ビザンティン余白詩篇第40篇の図像選択と改変──辻絵理子The Illustrations of Psalm 40 and their Modifications in the Byzantine Marginal PsaltersEriko TSUJIAbstractByzantine Marginal Psalters have various illustrations in the margins that function as marginal commentaries.In the ninth century, the Chuldov psalter (Moscow, State Historical Museum, Cod. gr. 129d) adopted the scene ofJudas’acceptance of the bribe and the Last Supper as illustrations of Psalm 40. Consulting the model, theTheodore Psalter (BL, Add. 19352), written in the eleventh century, added to the verse of 40:2 an old man whogave charity and also modified the composition of the illustrations of Psalm 40 for emphasis on the contrastbetween the bribe of Judas and the almsgiving for the needy in the spread of ff.49v-50. Furthermore, the eleventhcenturyPsalter maintained the continuity of a chain of episodes that led to the Betrayal in the recto and verso(ff.50-50v). It is also worthy of attention that the painter of the Theodore Psalter crossed the difference of thequires of the manuscript.中期ビザンティン(9~13世紀頃)の作例が残る余白詩篇写本は、テキスト・コラムを綴じ側に寄せて予め設けた余白に、新旧約聖書や聖人伝等に基づいた挿絵を描く。本文は旧約聖書の「詩篇」であり、末尾に頌オード歌が収録される。全頁大挿絵やコラム・ピクチャー形式と異なって、本文の文字送りを融通して挿絵のための空間を確保する必要がなく、余白に挿絵を施すも空白のまま残すも自由であり、対応する本文の近くに挿絵を配することが可能である。記号を用いて本文の特定の章句と挿絵との結びつきを示すこともする。本文の内容を字義通りに絵画化するのみでなく、本文に絵画による註釈をつけ、各挿絵がそれぞれの章句に対応しながら挿絵のみでも意味を形作る箇所も見られる。11世紀の『テオドロス詩篇』(BL, Add. 19352) ?は、現存最古の作例である9世紀の『クルドフ詩篇』(Moscow, State Historical Museum, Cod. gr. 129d) ?を原型に持ちつつも、様々な改変を加え、手本の時点で複雑であった構成を更に重層化する傾向がある。これまで筆者は、同写本の中でも、本文である旧約詩篇章句と結びつきながら近接した図像同士で新約キリスト伝の物語を語り、レイアウトを駆使して重層性を持たせた挿絵群を指摘してきた?。手本となった写本の構成、旧約詩篇の内容、テキスト・コラム横と下部に設けられた余白という、内容及び空間に亘る制約のもとに、各詩篇・図像に合わせて様々な改変を行ってきた『テオドロス詩篇』を論じるためには、細部を他の作例と比較し、対応する本文章句と突き合せ、レイアウトの変更を確認し、前後の図像との関連性を検討するという、一見迂遠に思えるような手続きが不可欠である。本稿ではそうしたケース・スタディのひとつとして、詩篇第40篇? (以降、数字のみ示す場合は詩篇本文)に描かれた挿絵を取り上げ、比較考察する。『クルドフ詩篇』f.40v9世紀の『クルドフ詩篇』は、f.40vの一葉に第40篇の挿絵を収めている(図1)。本文コラムの横に設けられた縦長の余白に、40:7「私に会いに来る時はいつも、彼はよからぬ結末を語った/彼の心99