ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

WASEDA RILAS JOURNALが直接測距できる点を確保するため、基準点の数が増えた点が特徴である。トラバース測量に並行して、水準測量も行った。まず、岩屋古墳に設置されたPT11(28.967m)からRK0へ原点移動を行った。往復の観測で2mmの観測誤差が生じ、比高+ 5.804を採用し、RK0の標高を34.771mに設定した。その後、RK0を基準として、RK1~4・S1~5・A ~ Iの各点を経由する環状・結合路線で水準を観測し、標高を設定した。なお、K1~ K14についてはTSでの開放設定の際に、SMP222で直接観測して設定した。4.デジタル測量の方法(城倉)早稲田大学文学部考古学コースの城倉ゼミでは、千葉県の高田2号墳(城倉ほか2012)、殿塚・姫塚古墳(城倉ほか2014)、及び龍角寺(城倉2015)の測量・GPR調査を実施してきた。測量の基本的な方法としては、遺跡・遺構の主軸を重視した局地座標を設定した上で、オートレベルを用いて10cmもしくは20cm毎の等高線を20~30cm間隔のカラーピンポールで明示し、その地点をTSで測距して座標を記録した上で方眼紙にプロットし結線する方式を採用してきた。この方式の最大の利点は、考古学を学ぶ学生たちが墳丘をよく観察しながら、現地で視覚化された等高線を図面に表現できる点である。「作図をする楽しさ」により学生もモチベーションが維持でき、墳丘を子細に観察する目を養うことができるなど教育上の利点は非常に大きい。この方式は、城倉が学生の頃に参加した測量調査(御前鬼塚古墳・桜井茶臼山古墳・メスリ山古墳・檀場山古墳・釜の上古墳など)で実践されていた方法で、機材が平板からTSに代わっても等高線を追いかけて方眼紙上に作図する点は同じである。一方、近年では3Dレーザースキャナーを用いた古墳のデジタル測量(犬山市教育委員会2009・寺村2014など)や、天皇陵の航空レーザー測量(大阪府立近つ飛鳥博物館2013・桜井市立埋蔵文化財センター2014など)といった新しい方法が実践されている。解析に高額な機材やソフトウェアの知識が要求されるものの、計測作業そのものは短時間で精度の高い測量図を作成することが可能である。しかし、この方法は専門業者への委託という形で行われるため、大学の学術調査に必ずしも適合的な方法ではない。注目されるのは、岡山大学が中心となって行った造山古墳のデジタル測量の方法である。墳丘をある程度の範囲に区分けし、TSを用いて座標を無作為に測距し、集積した座標をGISソフトのIDRISIにインポートして、TIN→DEM→Contourを作成する手法である(新納編2008)。墳丘のデジタル測量の利点は、墳丘表面を実際に測距した正確な座標から墳丘の三次元化が行える点である。レーザースキャンや航空レーザーに比べて、墳丘の正確なSurface情報を取得できる。さらに、従来は平面測量図から作成したエレベーション図などで立体的な復原を行っていたが、デジタル測量では点群の集合、あるいはTIN・DEMによって墳丘を立体化できる点が最大の強みである。この特性を利用して、墳丘の側面観を点群データで立体的に示すと同時に、段築の基本単位を抽出して、平面図の分析と合わせて設計原理を追求した新納泉の研究は画期的である(新納2011)。等高線自体は、GISソフトによって任意のContourで描出できるため、立体的な墳丘を等高線という「輪切りの情報」で提示してきた従来の測量図と全く異なり、墳丘地表面の点群データ、あるいはTIN・DEMなどのSurfaceデータの重要性を新納のデジタル測量の方法は示している。以上の研究状況を踏まえた上で、本調査では従来の等高線測量に基づく作図の有効性を認識しつつも、新しい方法での墳丘の情報化を試行するため、GISを用いたデジタル三次元測量を採用した。なお、デジタル測量の方法論については、寺村裕史が造山古墳の事例を基に詳述している(寺村2014)。寺村は墳丘測量データの空間内挿におけるTINモデルの有効性を示し、合わせて様々なデータ処理の方法を試行している。50号墳の調査に際しては、特に岡山大学の造山古墳の測量方法を参考とし、概報や論文で公開されているデータを読み込んで検討し、調査方法を決定した。以下では、本測量調査の方法について説明しておく。まず、従来は遺跡・遺構の軸線を重視して局地座標で測量を行った上で、世界測地系に変換する方法を採用していたが、今回は世界測地系で全ての座標を管理することにした。世界測地系に基づくXYZを古墳の基準杭に設定した上で、測量作業の利便性から古墳を大きく地区割した。すなわち、後円部墳頂のRK0、前方部墳頂のRK1を結んだ線を仮想主軸とし、主軸に直行しRK0とRK1を通る南北ライ222