ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

千葉県栄町龍角寺50号墳のデジタル三次元測量・GPR調査て説明した。デジタル測量の問題点としては、①紙を用いた作図を一切行わないため、調査者の観察に基づく知見を図面に反映できない点、②作業が非常に単調で、参加学生のモチベーションを維持するのが難しい点が挙げられる。①については、デジタル測量によるデータが、従来の等高線測量とは全く異なる特性を持つ点を考慮する必要がある。等高線で墳丘を輪切りにするのが等高線測量だとすれば、GISを用いた三次元デジタル測量は墳丘のSurfaceデータを点群情報として取得する根本的に異なる方法である。デジタル測量は客観的な情報の取得に主眼があり、取得した座標データをPCを用いて解析することで様々な角度から墳丘を分析できる点に、この方法の最大の利点がある。GISで作図した測量図に観察者が現地で記録した「傾斜変換線」などを合成する方法(寺村2014)もあるかもしれないが、客観的なSurface情報を重視するならばDEMデータからのSlope解析などで変換点を把握すべきで、もし必要であれば等高線測量・デジタル測量の両者で完全に別の作図をすべきだと思う。なお、大量のSurfaceデータを素早く取得できる点では3Dスキャナーの利用が適しているとも言えるが、実際には樹木や腐葉土で覆われる古墳の地表面を正確に把握していくには、TSを用いた測距に基づく人力でのデジタル測量が必要になる。この方法は、墳丘の立体構造を把握できる点が圧倒的に有利で、PCを用いた多角的解析ができる点も考えれば、今後はGISを用いたデジタル三次元測量が主流になっていく可能性が高いと考えている。②については、大学の学術調査では非常に大きな問題点である。平板やTSを使用した等高線測量の作図では、参加学生が墳丘を観察しながら等高線を結線し、測量図が出来上がっていく喜びを実感することができる。私自身も、大学4年生の頃、桜井茶臼山古墳の測量に参加し、巨大な古墳の全体像が徐々に浮かび上がっていく過程に感動したことをよく覚えている。一方で、デジタル測量では区画された範囲内を、ひたすらに測距してカラーピンポールを立てる単純作業が毎日続く。もちろん、この作業自体を変えることはできないが、①毎晩宿舎でGISを用いた現状の作図を行い、各班・各人の作業が調査全体の中でどのような位置にあるかを把握できる機会を設ける、②作業途中の図面を毎日配布し、現地で墳丘の観察時間を設けて最終的な分析に反映できるようにする、など参加者のモチベーションを維持しながら、機材やソフトに習熟し、墳丘の観察眼を養える工夫を考える必要がある。以上、等高線測量・デジタル測量、それぞれメリットとデメリットは存在するが、遺物の三次元計測技術なども普遍化する中で、考古学の測量方法が前者から後者へと主軸が移る点は確かだと考える。早稲田大学考古学研究室としては、研究・教育両面から最善の方法論の模索を継続したいと考えている。5.GISの解析作業と測量成果(城倉)前節で詳述した方法によって集積した座標データは、合計27,452点だった。なお、座標データの中には、TS設置時に基準点を後視するため、基準点上の点を誤って測距しているデータ、あるいはノンプリモードでミニプリズム以外を測距した点などイレギュラーなデータが若干含まれている。これらの座標については、GISの3D画像上で座標を特定しデータを消去した。消去した座標は77点で、GISの分析に用いた最終的な座標は27,375点である。この座標を基礎として、GIS(Geographic InformationSystem)を用いた作図、及び解析を行った。早稲田大学文学部考古学コース(城倉ゼミ)では、2012年にEsri社のArcGISを導入し、毎年ライセンス契約をしている。以下の分析は、基本的にはArcGISのソフトウェアを用いた解析成果である。まず、TSで収集した座標データは、ExcelからCSVデータに変換した上で、ArcMapにインポートし点群データを表示する。更に、3D AnalystでTINを作成した後、TINからラスターデータ、すなわちDEM(Digital Elevation Model)を作成する。DEMからは任意のContourが作成できるので、0.1m、あるいは0.05mで等高線を描出した。なお、ArcGISでは、TINからラスター化する際に、サンプリング距離の設定ができるため、Cellsizeを0.05m、0.2mの2種類に分けてラスター化した。空間内挿のメソッドはNatural Neighborsを選択している。今回の調査では、約1920m 2の調査範囲に27,375点の計測点なので、単純計算で1m 2あたり15点弱の計測点がある。非常に細かい精度なので、10cmの等高線を描出するため、0.05mのサンプリング距離、つまり5cmメッシュに設定している。等高線225