ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

WASEDA RILAS JOURNALが若干ギザギザになるものの、正確な情報の提示を重視した。また、後述する傾斜角(Slope)解析の画像もCellsizeの設定によって精度が変わる。墳丘全体を把握するには20cmメッシュ、細部表示の際には5cmメッシュを使用してSlolpe解析を行った。なお、傾斜角の色設定についてはArcのデフォルトで設定している。ArcGISで描出したContourとラスターサーフェスから傾斜角(Slope)解析した画像を合成すると、墳丘の傾斜度の違いをビジュアルに把握できる。従来は調査現場での観察で「傾斜変換線」とした作業だが、墳丘の段築構造や墳裾の位置を反映する傾斜変換を測量図に表現するのは非常に難しく、観察する人間によって位置が変わってしまう問題点があった。しかし、この手法であれば、客観的なデータとして変換点を認識できる。また、今回は提示をしていないが、地形と墳丘構造を立体的に示すには3次元表示が効果的である。ArcInfoを使えば、点群から三次元のTIN・Contour・Slopeを作成することが可能である。ただし、三次元画像の研究への応用は今後の課題である。なお、GISでは座標を正確に表示できるので、トラバース路線図・レーダー区配置図、地区設定図なども作成が非常に簡単になった。さらに、AdobeIllustratorにレイヤー構造でエクスポート可能で概報・論文作成の利便性は高い。従来の調査では作図した測量図のトレースの際にかなりの誤差が生じていたが、GISを導入したことで誤差は限りなく少なくなった。調査成果としても、①PDF化した日誌、②調査風景のデジタル写真、③基準点と計測点のExcelデータ、すべてがデジタルデータで管理できるのも利点である。さらに、最終的な座標データを数メガのExcelデータとしてHPで公表すれば、第3者も客観的な分析が可能になる。現在、城倉が所長を務める「早稲田大学東アジア都城・シルクロード考古学研究所」のHPでデータ公表の整備を進めている。各機関の調査座標の公表が進めば、墳丘研究は新しい段階に入っていくと思われる。さて、以上のGISの解析作業の過程を示したのが、図6である。また、本調査の成果として提示したのが、図7の10cm-Contourによる平面図、および図8の10cm-Contour + 20cmメッシュSlope合成図である。次には、この両図をもとに測量成果をまとめる。50号墳は浅間山古墳、57号墳に次ぐ規模を持つ前方後円墳で残りの良い古墳である。龍角寺古墳群が存在する台地の西縁辺に立地し、墳丘北東まで続く平坦な台地が北西・西南・南東で落ち込んでいく傾斜地に前方部を北西に向けて所在する。以上の立地のため、墳丘の西側の土の流出が激しく、前方部北西隅から南側くびれ部にかけてだらだらと外側に広がる形状を呈する。また、墳丘南東側から反時計周りに遊歩道が続き、前方部北西隅角をかすめて北側へ抜けている。なお、甘粕の1964年の図面でも表現されているように、墳丘北側に沿って旧農道と思われる小道の痕跡が南東から北西に向けて続いている。調査開始当初は、周溝の可能性も考えたが、墳丘主軸とは平行せず、弓なり状を呈する点、墳丘南側に対応する痕跡が見いだせない点、GPRに顕著な反応がない点などから近現代の農道と判断した。現状では、周溝の有無は不明である。墳丘は2段築成で、前方部北西隅角から南側くびれ部にかけて崩れている以外は、よく残存する。図8のSlope解析で明瞭なように、テラス面が幅広な点が特徴である。墳丘南側テラスのくびれ部付近に大きな盗掘坑が確認できるが、萩原・原田のボーリング調査では、この部分で石材を確認し、横穴式石室が想定されている(萩原・原田1985)。今回の測量調査中も前方部前面の斜面で、雲母片岩の板石の破片を確認しており、片岩系の埋葬施設が想定できる。しかし、後述するようにGPRの反応からする限り、箱式石棺の可能性が高いと考えている。6.GPRの方法(青笹)GPRは、物理探査の一種である。Ground PenetratingRadarの略称で「地中レーダー探査」と訳される。送信アンテナから発信された電波は、地中の埋蔵物や層の境目など誘電率の異なる境界に反射して受信アンテナに記録される。GPRは反射した電波の強弱と所要時間から地中の構造を把握する。アンテナの周波数は、低いと波長がゆっくりとなるため深い反応を探ることができる。逆に周波数が高いと波長が早くなるため浅い反応しか探れない。しかし、波長が早い分得られる情報はより鮮明となる。つまり、電波が届く深さと得られる情報はアンテナの選択で決まる。今回の調査では250MHzと500MHzのアンテナを使用したが、それぞれ約5mと3mまでの反応を探ることができる。次に現場の作業を説明する。まず、探査の前に遺226