ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

WASEDA RILAS JOURNALいる奈良文化財研究所の金田明大氏よりMALA社製X3Mとアンテナ上部をお借りして、探査を実施することとなった。探査中はX3Mで得た情報を逐一確認しつつ、MALA社製250MHz・500MHzのアンテナを用いた。今回は、埋葬施設の存在が想定されるR10区のみ250MHzのアンテナを使用した。レーダー区は、全体区とR1~ R10の小地区を設定した(図10)。小地区は、広い範囲を対象にした大地区に比べ、遺構に直交する反応を表現しやすい利点がある。また、短い時間で反応の強い箇所を把握でき、かつ地中の情報をより詳細に得られる。測量の成果と合わせると、発掘のトレンチ調査に近い反応を得られ、確認調査に適している。以下、各地区の設定範囲と対象遺構について述べる。【全体区】35×40m。墳丘全体と埋葬施設の位置。【R1区】7×8m。前方部北東隅角の墳裾。【R2区】2×15m。前方部北側の墳裾とテラス。【R3区】18×16m。北側くびれ部の墳裾とテラス。【R4区】2×15m。後円部南東側の墳裾とテラス。【R5区】2×11m。後円部南側の墳裾とテラス。【R6区】2×15m。後円部南側の墳裾とテラス。【R7区】12×7m。南側くびれ部の墳裾とテラス。【R8区】2×18m。前方部南側の墳裾とテラス。【R9区】2×16m。前方部前面の墳裾とテラス。【R10区】7×7m。テラスの埋葬施設。取得したデータは調査終了後に大学でGPR-Slicev.7.0のソフトウェアを使用して解析を行った。さて、今回実施した解析方法だが、取得してきた.rd3という拡張子のデータを元にTime SliceとProfileを作成した。Time Sliceは一定の深さにおける平面図で、Profileは測線毎の断面図である。これらはgainを調節することで、深い反応を強く見せたり、あるいは浅いところのノイズを弱く見せたりすることが可能である。また、filter補正をかけることで、反応の相対的な強弱を把握できる。filter補正の具体的な手順だが、まずbandpassという操作で無線等のノイズを除去する。続いてbackgroundという操作で地上の最上面における強い反応を除去する。最上面はアンテナと接している最初の境界であるため、強い反応が生じる。この反応を除去することで、相対的な強弱がより明瞭に表示できる。7.GPRの成果(城倉)本調査では全体区、小地区に分けてGPR作業を行った。まず、埋葬施設の検出を目的として全体区の作業を行った。当該地域の古墳時代後期~終末期では「変則的古墳」と呼ばれるテラス・墳裾・周溝などに複数の埋葬施設を持つ古墳がある。そのため、全体区で反応を確認した。結果、萩原・原田が報告した南側テラスくびれ部付近に強い反応を認めたが、後円部墳頂・前方部墳頂においては顕著な反応が認められなかった。次に、墳丘の各部位に直行するような形で設定したR1~R10の調査区では、段築・墳裾・周溝などの範囲確認を目的として作業を行った。図11には、各区の反応を測量図と合わせたTime Slice平面図を提示した。なお、GPRの断面図であるProfile図については、紙幅の都合から割愛したが、現在まで行ってきたGPR調査をまとめて別に報告を予定している。図11を見ると、R1~R9区においては墳裾や段築と思われる反応が確認できる。しかし、墳丘外においては周溝と思われる反応は認識できなかった。なお、R10区のみは、埋葬施設の存在が予想されたため、250MHzのアンテナで作業したが、結果的にはテラス内におさまる範囲で反応が認められたため、横穴式石室ではなく竪穴系の箱式石棺の可能性が高いと判断した。8.50号墳の墳丘復原とその意義(城倉)最後に、デジタル測量・GPR探査を踏まえた上で、50号墳の復原を行い、浅間山古墳と比較する。まず、50号墳については甘粕健による分析成果がある(甘粕1964)。甘粕は50号墳の測量成果から、全長43.6m・後円部径28.7m・前方部幅30.0m・くびれ部幅24.8m・後円部高4.9m・前方部高4.7mと推定した。また、後円部の6等分値=αを、全長9:後円部径6:前方部幅7の比率で各計測点を割った平均から算出している。甘粕の表では、αa=4.8、αb=4.85、αc=4.85で平均4.83mとなっているが、これは誤植と思われ、前述の計測値を各比率で割ると、αa=4.84、αb=4.78、αc=4.29で平均4.64mとなる。さらに、龍角寺古墳群の21・70・50号の平面形を分析し、くびれ部の決定原理を指摘した。すなわち、21号→くびれはDを中心としてDCにαを加えた半径の円弧と後円部の交点になる(「DC +α230