ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

WASEDA RILAS JOURNAL型」)、70号→DCに2αを加えた半径と後円部の交点になる(「DC + 2α型」)、50号→Dから4単位の円弧とOから4単位の円弧の交点となる(「(CD+α)×(R +α)型」原文ママ)に分類した(図12)。さらに、前方部幅QQ’は、Dから半径4単位とDを通って主軸と直行する線の交点とする。本来の用語としては、50号墳は(「DC +α」×「OC+α」型)となるべきで、甘粕の第3図と第4図に示された50号墳の復原にも齟齬やQとRの混同があるなど若干の混乱はあるものの、BC:CP:PD:くびれ部型の表記で、浅間山古墳(6:1:2.5:7)、57号墳(6:0.5:3.5:7)、50号墳(6:0:3:8)の比率を示し、これら3古墳を一系列の古墳とした上で、CPが短くなる(=前方部前面の斜面の水平距離が大きくなり、前方部頂が後側に移動する)方向性を示した点が注目される。すなわち、浅間山古墳→57号墳→50号墳の築造順序を推定したのである。一方、古墳のデジタル測量とその分析方法については、新納の画期的な研究がある(新納2011)。新納は造山古墳のデジタル測量の成果を踏まえ、墳丘中軸線より西側の全計測点を側面からプロットした側面観をGISで作成し、定量分析を行っている。すなわち、後円部・造り出し・前方部の各20m幅の点群を抽出し、各段の高さの比率(1): 1:3、及び6.25mという基本単位を抽出した。基本単位を27尺、4.5歩と推定すると、1尺長は0.231mとなる。新納によると、後円部半径は1単位の16倍、テラス幅は1単位など計測点に合致するという。50号墳のデジタル測量では、計測した座標を用いて新納の方法論を応用してみることにした。まず、点群のCSVデータをArcGISにインポートして、TIN・DEM・Contourを作成する。このマップをAIに出力して、Illustrator上で主軸を回転、世界測地系での墳丘の方位角を割り出した。再び、GISでShapeファイル化した点群、およびベクターデータに方位角を入力して回転し、主軸をGIS上の真北に設定した。回転したShapeファイルの属性フィールドに作成される新しいX、Y座標をテキストデータで出力、CSVに変換した。再度、座標をインポートし、残存度の高い北側を分析対象とするため、主軸を境界として南側の点群、および周辺地形を画面上で選択して除去、最終的な点群データをエクスポートした。この座標のYをXフィールドに、ZをZフィールドにインポートすると、主軸を境界として北側の点群をオルソ化した側面観が出来上がる(図13上)。同じ作業をして、O点を通り主軸と直交する線より北西の計測点および周辺地形を除去した後円部後面観が図13上から2番目である。以上の側面観・後面観を用いて、側面観の後円部中心の2m幅(A)、及び後面観の後円部中心2m幅(B)の点群を抽出し、標高10cm毎の分布状況(ヒストグラム)を作成したのが図14下である。このヒストグラムを見ると、AとBのピークはほぼ一致しており、29.8m・32.0m・34.6mにピークがある。3点の比高が第1段、第2段高を反映しているとすれば、第1段が2.2m、第2段が2.6mになる。しかし、墳頂部からは土が流出し、墳裾には土が堆積しているので、現状の高さを古墳本来の高さと考えることはできない。理想的には、新納が試行しているように三段築成の巨大古墳における2段目の分析から高さを算出するべきだが、50号墳のような比較的小規模な前方後円墳であれば、復原的に高さを考慮する必要がある。今、図8の10cmContour+ 20cmメッシュSlope合成図で、A・Bの当該個所を観察すると、A・Bともに標高31.9~32.6mが茶色=傾斜角が緩くなっている点がわかる。つまり、ヒストグラムから導きだした標高32.0mという数字は、本来のテラス面が想定される31.9~32.6mの範囲でも、低い位置を示していることになる。もちろん、置土や化粧土によってテラス自体が外側に向けて低くなる傾斜を持っている可能性もあり、その正確な高さの確定は困難であるが、仮に31.9~32.6mの中間と仮定すると、32.25mほど。すなわち、ヒストグラムから導き出した32.0mよりも0.25mほど高い位置にテラス面を想定することができる。今、ヒストグラムから導きだした第1段(2.2m)、第2段(2.6m)にSlope解析図から想定した0.25mという数字を土の流出・堆積値として機械的に増減するとどうなるだろうか。第1段はテラス面が0.25m高くなり、墳裾への堆積を0.25mと仮定すると、2.7mになる。第2段は、テラス面が0.25m高くなる数字と墳頂の流出を同じに仮定すれば±0で、2.6mになる。以上の推定から、本来の後円部の上下段は1:1に近い比率になる可能性がある。試みに上述した上下段の高さを1:1、2.6~2.7m232