ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

WASEDA RILAS JOURNAL NO. 3 (2015. 10)開会の辞シンポジウム「新しい人文学の地平を求めてーヨーロッパの学知と東アジアの人文学ー」開会の辞李成市Opening CommentSungsi LEE本日はシンポジウム「新しい人文学の地平を求めて―ヨーロッパの学知と東アジアの人文学」に参席くださり、洵にありがとうございます。冒頭から私事にわたり恐縮ですが、私は本年(2014)9月まで文学学術院長を務めておりました。在任中の本年7月に、幸いにも代表者として申請しておりました「私立大学戦略的研究基盤形成事業」に採択されました。この研究基盤形成事業の構想調書を作成する際には、本日の主催者であります早稲田大学総合人文科学研究センター長の海老澤衷副学術院長や、シンポジウムのコーディネーターを務めてくださっている甚野尚志先生を始めとする文学学術院の同僚と、申請に相応しい研究テーマを4ヶ月にわたり検討して参りました。今この間の経緯を想起しますと、本日ご報告くださる安酸敏眞先生が本シンポジウムの予稿のなかで、出版されるや大変に反響のありましたご著書『人文学概論―新しい人文学の地平を求めて』(知泉出版)を執筆される契機が学部長としてカリキュラム改編に取り組まれたご苦心が述懐されていますが、それを拝見して改めて共感するところが少なからずありました。というのも私は、これまで自分が専門としている研究を中心に物事を考えて参りましたので、学術院・学部の責任者となりましてから、研究・教育に従事している職場の現状や未来について、我がことのように切実に取り組まなければならなくなったことに、とても当惑しました。なかでも受験生の皆さんに、パンフレットなどで人文学を学ぶ意義について自分の言葉で語らなければならなくなったことに大きな負担と責任を感じざるを得ませんでした。さらに、早稲田大学の広報めいたことに言及することをお許し下さい。私が学術院・学部の責任者として全学レベルの会議体で最初に直面しましたのは、すでに前年の2012年に早稲田大学が創立150周年を迎える2032年に向けて、大学の中長期計画であるWaseda Vision 150というマニフェストを掲げ、記者発表を行っていたということであって、学術院としてもこの将来構想の実現が必須の課題になっていたということでした。このマニフェストは、具体的に13の核心戦略と70以上におよぶプロジェクトから構成されており、しかも難儀なのは達成目標の中には、現在の国会議員選挙でも各政党が忌避している数値目標が掲げられていることです。たとえば、2032年には、全学生の2割は留学生とする。全教員の2割は外国人ないしは外国で学位を取得した者とする。全授業の5割は、外国語の受容にするというような具体的な数値が掲げられています。早稲田大学の建学の理念(教旨)は、一に「学の独立」、二に「学問の活用」、そして三に「模範国民の造就」ですが、先ほどご紹介したVision 150の具体的な数値からもうかがえるように、この最後の「模範国民の造就」の「国民」は「地球市民」に止揚させて、早稲田大学は世界に貢献するグローバルな人材を育成する世界の大学を目指そうというので239