ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

WASEDA RILAS JOURNALようとした.筆者は,彼の著作Siddh?ntabindu(SB)と??varapratipattiprak??a (?PP) (3)に見られる主宰神観を検討することによってそのことを明らかにした(4) .そのような思想活動に際し,マドゥスーダナは?PPにおいて,ヴィシュヌ派の一派であるパンチャラートラ派(P?ncar?trika)に特徴的なヴィユーハ説(vy?hav?da)をアドヴァイタ教学に取り込んでいる.そしてそのことによって,ヴィシュヌ神をアドヴァイタ教学の中に位置づけようとしている.またヴィユーハ説をアドヴァイタ教学化することによってパンチャラートラ教学を再構成しようとするのみならず,12世紀に活動したヴィシュヌ派の学匠ヴォーパデーヴァ(Vopadeva or Bopadeva)の教学やシヴァ派の教学までをもそのアドヴァイタ教学化したヴィユーハ説の中に統合しようとしている(5).本稿では,?PPの該当箇所を検討することによって,マドゥスーダナがこれら有神論諸派の教学をアドヴァイタ教学の中にどのように位置付けているのか,ということを明らかにしたい.2. ??varapratipattiprak??aにおけるサンカルシャナのアドヴァイタ教学化マドゥスーダナは?PPにおいて,主宰神の個別性(vi?e?ana)を説明するに当たり,ヴォーパデーヴァとシヴァ派の教義体系の,主宰神が五様の姿を採るという主宰神論を紹介する(6) .しかしその後に,N?si?hottarat?pan?yopani?ad(NUTUp)に主宰神の四様の区分が説かれている(7)として,主宰神がヴァースデーヴァ(V?sudeva),サンカルシャナ(Sa?kar?a?a),プラディユムナ(Pradyumna),アニルッダ(Aniruddha)の四様の姿を取ることを説き始める.この四者は,ヴァースデーヴァ,即ちクリシュナ(K???a)神とその神話上の親族である.更にパンチャラートラ派のヴィユーハ説は,ヴィシュヌ神(クリシュナ神)が世界創造に当たり次第に後三者の姿を取る,と説くものである(8) .マドゥスーダナは,このヴィユーハ説を天啓聖典であるNUTUpによって権威付け,アドヴァイタ教学化しようとしているのである(9) .以下に該当箇所を検討する.Text 1 ?PP 7, 18-22:tatra panc?k?tamah?bh?t?bhim?n? vir?? tadantary?m?param?tm? ota? sth?la ucyate, sa ev?niruddha?.evam apanc?k?tamah?bh?t?bhim?n? j?vo hira?yagarbha?tadantary?m? anujn?t? param?tm? s?k?ma ucyate, saeva pradyumna?.その中で,五分結合した元素を私と思いなしたヴィラージュ(vir?j),その(ヴィラージュの)内制者である最高のアートマンが,[NUTUpにおいて]粗大なものであり,羅織(ota)である,と言われる.彼こそがアニルッダである.同様に,五分結合していない元素を私と思いなした命我であるヒラニヤガルバ(hira?yagarbha),その(ヒラニヤガルバの)内制者である最高のアートマンが,[NUTUpにおいて]微細なものであり,認可者(anujn?t?)である,と言われる.彼こそがプラディユムナである.先ずここでは,アニルッダとプラディユムナに関する解説がなされている.アドヴァイタ教学において,現象世界は粗大な物質と微細な物質から成ると考えられている.そして,最高のアートマンが,その粗大な物質を構成する五分結合した元素(10)を私と思いなすヴィラージュ(11)を内部にあって制御する状態にあることが,NUTUpにおいては粗大なもの,羅織と言われており,またそのようなアートマンがアニルッダである,というのである.また,最高のアートマンが,微細な物質を構成する五分結合していない元素を私と思いなすヒラニヤガルバを内部にあって制御する状態にあることが,NUTUpにおいては微細なもの,認可者と言われ,またそのようなアートマンがプラディユムナであると言われている.以上のように,最高のアートマンが,五分結合した元素を私と思いなすヴィラージュや,五分結合していない元素を私と思いなすヒラニヤガルバにとっての内制者の状態にある,とする説は,アドヴァイタ学派の開祖シャンカラ(?a?kara, ca. 700-750)に帰せられるPanc?kara?a(PK)やシャンカラの弟子スレーシュヴァラ(Sure?vara, ca. 720-770)に帰せられるPanc?kara?av?rttika(PKV),サルヴァジュニャートマン(Sarvajn?tman, ca. 8th?/10th?)のPancaprakriy?(PPr)に既に見られ(12) ,マドゥスー30