ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

新羅仏教の大衆化と元暁元暁の仏教大衆化の実践理念が元暁の空有和諍にあるといった。もともと空と有は、衆生のための方便として、すなわち菩薩行を実践しようというところにある。それは、まさしく衆生を済度するための方便として、相互に異なる方法を提示することである。しかし、そのような主張が、ついには、それぞれの衆生救済方法に執着し、争論として広がり、かかる争論が元暁の目には衆生救済の真正な菩薩行をなおざりにしているものだと映ったのである。そうして元暁は、既成教団に向かって、そのような無意味な論争にがんじがらめにならず、生の苦痛に心を痛める衆生たちを裏切らず、和諍思想を通じて、空有争論をする前に、大衆仏教が主張する真正な菩薩思想による菩薩行に帰させようとしたのである。すなわち、元暁の空有和諍思想は、思想的に中観と唯識思想と異なっていたり、優越性を強調するためだったり、あるいは彼の行為だけが従来の善知識より優れているということを言おうとしたのではなく、まさしく元暁は、忘却されようとしている真正な菩薩行に対して、今でもまたシッダールタが最初に出家した時の心である真正な初心の菩薩心に帰し、まさに貧賎や階級などに拘泥せず、生老病死に苦しむすべての衆生のための真正な菩薩行を行おうとしたのである。3結語以上、元暁時代の仏教大衆化に対して検討してきた。ある人は、社会階級上の庶民を対象とすることだけが仏教大衆化であると規定している。もしそうだとすれば、仏教大衆化の定義は階級と卑賎によって命名されるものといわねばならない。しかし、釈尊の教えは、決してそうではない。すなわち、仏教大衆化とは、仏教を通じた仏国浄土への道、つまり仏教の社会化をいうものである。それゆえ、本稿は、貴族中心であれ、街巷中心であれ、仏教の社会化という観点から仏教大衆化に迫ってみた。ところで、新羅社会の仏教大衆化が現代に生きる我々に示唆することは何か。出家者の場合は、出家時の真正な初発心時の心であること。在家者の場合は、誠実な福利の意味を再度振り返ってみるということ。そして、出家、在家者が一つになった仏弟子として真正な菩薩行を疑情とすると同時に、真なる菩薩行を実践することで、増長する智恵と福徳を通じて仏道を修得しようということではないだろうか。元暁の普遍的な和諍思想は、まさしく内的かつ外的に今日のわれわれの仏教界に投げかけられた話頭ではないかと考えている。注?『三国遺事』巻4・円光西学、『海東高僧伝』巻2・安含、『続高僧伝』巻24・慈蔵、『三国遺事』巻4・二恵同塵、『宋高僧伝』巻4・元暁、『三国遺事』巻4・元暁不覇、南東信「元暁の大衆教化と思想体系」ソウル大博士論文、85頁。?『三国遺事』巻4・円光西学、『海東高僧伝』巻2・安含、『続高僧伝』巻24・慈蔵、『三国遺事』巻4・二恵同塵、『宋高僧伝』巻4・元暁、『三国遺事』巻4・元暁不覇。(3)『宋高僧伝』巻4・元暁。(4)『金剛三昧経論』巻上(韓仏典1、604頁中-下)。(5)『大乗起信論別記』巻本(韓仏典1、678頁上)。(6)『金剛三昧経論』巻中(韓仏典1、638頁上)。(7)『宋高僧伝』巻4・元暁伝(大正蔵50・730頁上)。(8)『涅槃経』巻7(大正蔵12、644頁中)。(9)『菩薩戒本持犯要記』(『元暁全集』仏教学同人会編、120頁)。(10)仏教史学会編『古代韓国仏教教学研究』(民族者、1989)248-249頁。(11)『華厳経』巻5・四諦品(大正蔵9、429頁中)。(12)『三国遺事』巻4・元暁不羈。(13)『三国遺事』巻4・蛇福不言。(14)『宋高僧伝』巻4・元暁(大正蔵50、730頁中)。(15)金南允「新羅法相宗研究」(ソウル大博士学位論文、1995年)104 - 112頁;南東信「元暁の大衆教化と思想体系」(ソウル大学博士学位論文)89頁。(16)安啓賢『韓国仏教思想史研究』(東国大学校出版部、1990年)132 - 137頁。(17)元暁『阿弥陀経疏』(韓仏典1、562頁下);『無量寿経宗要』(韓仏典1、553頁下)。(18)『三国遺事』巻4・元暁不羈。(19)『三国遺事』巻5・広徳厳荘条。(20)前掲書。(21)『宋高僧伝』巻4・元暁(大正蔵50、730頁中)。(22)『三国遺事』巻1・太宗春秋公条。349