ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

大蔵経の歴史とその背景ference)」などを開催し、チベット仏教の英訳作業に尽力している。今後、インターネットを通じ世界が完全に一つになるとき、大蔵経も、そうした時代の潮流に歩調をあわせ、南伝と北伝は一つに収斂し、「世界大蔵経」として出現することとなるだろう。近い将来、大蔵経の、デジタル化および「現代言語」としての再誕生を期待する次第である。注?仏陀が在世中、現在の北部アフガニスタンのバルク(Balkh)から中インドに出向いた際、仏陀にサトウキビと蜂蜜を捧げた礼謂(Trapusa)と波利(Bhahaika)の記録が『仏説太子瑞応本起経)』に残っている。? Nakamura Hajime(中村元)(Delhi: Motilal, 1987), IndianBuddhism, pp. 90-91参照。(3)中国文化の黄金期であった唐時代の最初の木版印刷本といえる『妙法蓮華経』が680年頃、またそれ以降日本の『百万塔陀羅尼経』や、新羅の『無垢淨光大陀羅尼経』がほぼ同時期に制作されたことから、この頃が木版印刷の絶頂期であったとみることができる。この木版印刷(の技術―訳者による)は、のちの大蔵経造成作業時の技術的な土台となった。(4)この大蔵経の事業を主導していた宋太祖(趙匡胤)の三番目の年号(=開宝:968~976年―訳者による)から、「開宝版」と呼ばれる。(5)蜀版と称されるのは、同大蔵経が蜀の地方、すなわち四川省の地域で造成されたためである。(6)高麗大蔵経研究所は、韓国内に約300巻、日本の南禅寺や対馬島などに約2700巻現存する『初雕大蔵経』を復元・デジタル化しており、作業は2014年までに完了する予定である。『開宝版大蔵経』が総計5048巻であるのに対し、『契丹大蔵経』は約6000巻であったことが知られている。しかし、現在その殆どは消失してしまっている。(7)高麗大蔵経研究所は、韓国・順天の松広寺、日本・奈良の東大寺に各50~60部(総計1010部)を残す『新編諸宗敎藏総録』を現在調査・デジタル化している(2017年上期までに終了予定)。現在の調査によれば、『初雕大蔵経』に含まれていない現存する仏典は、国内外を含め約400部である。これら仏典が、敎藏の『総録』に含まれているか否かについては現在確認中である。(8)高麗大蔵経研究所は、これをすべてデジタル化し、2009年より、敦煌版、大正版などの多様な版本との比較および異体字などを、インターネットにて無償提供しており、日本と台湾の大蔵経のデジタル化を積極的にサポートしようと、そのソースコードを共有している。ホームページはhttp://www.sutra.re.kr/home_eng/index.do(英文)。(9)日本は、それまで朝鮮に対し83回にも及ぶ大蔵経請求の結果、総計63部を獲得したが、経板の完成本は(結局―訳者による)入手することができなかった。世宗7年(1425年)には大蔵経の経板を要求した。(10)小野田俊蔵・崔キョンチン「チベット語仏典ガイド」(韓国語)(http://www.bukkyo-u.ac.jp/mmc01/onoda/works/Tibetan%20Buddhist%20Works.pdf)参照。(11)チベット語では、チューゲー(chos rgyal)と称し、サンスクリット語では、ダルラジャー(Dharmaraja)と呼称する。(12)「翻訳名義集」(Skt., Mah?vyutpatti, Tib., sgra sbyorbam po gnyis pa)。(13)カワ・ペルツェク(ska ba dpal brtsegs)主導のもと、インド・チベットの僧侶が制作した三つの訳本が存在する。そのうちの一つが『鄧喝目?』と称されるところのこれ(「目録(dkar chag)」―訳者による)である。(14)チベットの高僧による著作としては、『蔵外文献』と称される高僧大徳の全集などが挙げられる。363