ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

WASEDA RILAS JOURNAL日NO.韓中3共(2015.同国際10)シンポジウム仏教文明の拡大と転回開催国に際あシンポジウムたって漱石の現代性を語る開会の挨拶越川房子Opening CommentFusako KOSHIKAWA本日は、早稲田大学総合人文科学研究センター主催「国際シンポジウム漱石の現代性を語る―歿後100年、生誕150年を前に―」にお出ましいただきましてありがとうございます。この総合人文科学研究センター、あまりお耳馴染みのない言葉かと存じますけれども、文化構想学部、文学部という2つの学部、それから文学研究科という大学院の3つから構成されております文学学術院の研究組織として2012年4月1日に開設されました。開設以来毎年1回年次フォーラムを開催しております。今年度の年次フォーラムが、今回のこの国際シンポジウムにあたり、1年でいちばん大きな行事となっております。本日、お出ましいただきました皆様、並びにご登壇いただきます講演者、それからシンポジストの皆様、また企画と開催にあたりご尽力くださいました全ての皆様に心よりお礼申し上げます。漱石は、わたくしどもと縁の深い作家です。東京帝国大学英文科在学中に、この文学学術院の前身である東京専門学校文学科の英語講師をしておりました。皆様もよくご存知のように彼はこの地下鉄早稲田駅の2番出口をちょっと出たところで生まれ、そこにある坂は夏目坂と呼ばれております。緩やかな坂は、夏目漱石にちなんで名付けられたものではなく、彼のお父様がこの地ゆかりの名士であり、ご自身がその坂を夏目坂と呼んでいたことがその由来と聞いております。彼は亡くなられるまでの9年間、その生家から徒歩で10分くらいでしょうか、現在の早稲田南町7丁目というところで執筆活動をずっと続けられてその地から冥府へと旅立たれたということです。現在、そこは漱石公園として一般に公開されていて、2017年には記念館がオープンするそうでわたくしも楽しみにしております。本日は午前中の公開講演と午後のシンポジウム、それからパネルディスカッションを通して、わたくしたちがこれまで何度も読んできたはずの漱石の言葉から、思いもかけない世界が開ける瞬間を皆様とご一緒に体験できることと思います。この瞬間は、刺激的な話題を提供してくださる登壇者の皆様から差し出されることもあるでしょうし、また、お出ましくださいました会場の皆様ご自身が、登壇者の言葉に触発されて、漱石の言葉にこれまでとは異なる色彩や香りというものを感じ取られることによるのかもしれません。いずれにせよ、こうした瞬間を体験するとき、わたくしは人間の生み出した文化を理解しようと、また現代社会という空間と時間における新たな意義を見出そうと、不断なく続けられている人文研究に対する深い尊敬と感謝の気持ちに満たされます。それは人文学が実学とされる自然科学や社会科学とその底辺においては共通し、しかし質の異なる、それらに勝るとも劣らない知の営みだからだと思います。人文学の受難の時代と言われる今日ではありますが、漱石とその作品をめぐって交わされる数々の対話によって、人文学が自然科学や社会科学にはない固有の価値とその意義を確かに有するということを実感する、そんな心躍る一日になると予感します。そしてこの漱石ゆかりの早稲田の地でそのような時間を過ごしていただけたら大変嬉しく存じます。最後に少しだけ、文学学術院についてお話させていただきたく存じます。文学学術院はこの9月に東京専門学校文学科として創設以来、125年を迎えます。早稲田大学は昨年の9月に文部科学省からトップ・グローバル・ユニバーシティ・プロジェクトを担う13のトップ大学の1つに選ばれました。このプ399