ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

気配と遭遇とくに「一七六」「一八三」を通して、清子の〈気配〉が描かれているという視点から考えました。まず〈気配〉が書かれ、その後に清子その人が出現するのです。〈気配〉があり、それに続く〈遭遇〉です。このように、こまやかに段階を踏む描き方で表わされている点に、清子という人物に関する特徴があり、また津田と清子の関係の特徴も見て取れると考えました。いくつものアプローチを可能とする「明暗」ですが、清子に関しても従来さまざまな読み方がおこなわれてきたと思います。漱石がどんな言葉を使って、どのように描いたかを、いま、改めて文章に即して見ていくとき、すでに読み尽くされたと思われる箇所からも、新鮮に受け取れる事柄が浮かび上がる可能性はあるはずです。「明暗」は、時代や読者の移り変わりとともに、別の顔を見せていく作品だと思います。439