ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

ページ
515/542

このページは RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌 の電子ブックに掲載されている515ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

WASEDA RILAS JOURNAL(22)513諸本を見る範囲では、標目や目次といった〈構成〉を増補・改変するといった構造にかかわる大規模な改変が幾度も行われた形跡は認められない。つまり、標目となる漢字を増やすといった「検索の範囲を広げる改変」が行われなかった。その一方で例歌の増補や抄出が行われ、出典注記などが施されていた。時代が下ると、丹鶴叢書本のように出典頭注の増補や標目類の書式の変更も行われるようになる。『和歌一字抄』は、その特異なコンセプトと政治的な状況に対応した性質を持たせられていた。そのため、当初の「歌題索引」と『秀歌撰」という二つのコンセプトの二面性を浮き彫りにしながら変容していく書物なのである。こうした様相の詳細については増補本系統の諸本の問題と共に、今後の課題として残されることになる。『和歌一字抄』という書物の複雑な異本関係は、制作上の事情だけでなく、書物のコンセプトの享受の様態を反映している。【付記】和歌番号は原則として新編国歌大観によったが、『和歌一字抄』は『校本』の番号によった。書名なく番号のみを書く場合は全て『校本』の歌番号である。一部都合で歌番号に漢数字とアラビア数字が混在する。『和歌現在書目録』は続群書類、『勅撰作者部類』は山岸徳平編『八代集抄全註』(有精堂出版、一九六〇年)、『古来風体抄』は歌論歌学集成によった。割注は〈〉で括った。写真は私に撮影したものを利用し、縦横比を維持して若干の加工を施した。貴重な資料の閲覧・画像の使用を許可くださった関係各機関に御礼申し上げる。本稿は二〇一四年度日本文学協会秋季大会での発表を元に成稿した。席上ご意見をいただいた先生方に御礼申し上げる。注(1)増補本系統の分類には、中村康夫「藤原清輔編『和歌一字抄』原撰本系統の校本作製の試み」(『国文学研究資料館紀要』二〇、一九九四・三)において中村による未刊行の論に依拠しているとある。増補本系統諸本についての翻刻や紹介は妹尾好信、日比野浩信らによって進められており、『古代中世国文学』一八号(広島平安文学研究会、二〇〇二・一二)では『和歌一字抄』についての特集が組まれている。(2)井上宗雄「原撰本『和歌一字抄』について」(『立教大学日本文学』四四、一九八〇・七)。同「藤原清輔伝に関する二.三の問題と和歌一字抄と」(『国文学研究』二五、早稲田大学国文学会、一九六二・三)。(3)伊井春樹「伝後光厳院筆『和歌一字抄』の本文」(『日本文学史論島津忠夫先生古稀記念論集』世界思想社、一九九七年)。蔵中さやか「「古き詞」へのいざない―『和歌一字抄』、『袋草紙』証歌群をめぐって」(『古代中世和歌文学の研究』和泉書院、二〇〇三・二)。(4)井上前掲論文。簗瀬一雄『簗瀬一雄著作集三中世和歌研究』(加藤中道館、一九八一)。(5)蔵中さやか『題詠に関する本文の研究』(おうふう、二〇〇〇)。同「平安図3架蔵本図4架蔵本