ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

WASEDA RILAS JOURNAL(18)517出典注記の一致は注目すべきことに違いない。だが『和歌一字抄』から『夫木抄』へ注記が写されたとは考えられない。『夫木抄』には「一字抄」の注記もあるので、『和歌一字抄』からの転記であればそう書けばよいのである。またその逆に『夫木抄』をみた後人が『和歌一字抄』へ注記を写したならば「夫木抄」の注記を付けなかった理由が分からない。これは『夫木抄』以外の撰集の場合も同じである。『夫木抄』と『和歌一字抄』注記の出典名が一致するのは、撰歌資料が共通するからであろう。『夫木抄』は、清輔撰の散逸歌集『題林』を基盤としていると考えられており(10)、蔵中も『題林』と『一字抄』との関係を想定している(11)。『題林』を増補して形成されたと考えられる『扶桑葉林』の一部が、冷泉家時雨亭文庫蔵『尚歯会和歌』である。これは『尚歯会和歌』を加工せず原資料のまま収載している。『題林』も『扶桑葉林』と同じように、膨大な歌会・歌合・私撰集の資料を特定の部立ごとに、原資料を加工せずに類聚した書物だったのではないだろうか(12)。『題林』は二百巻にも及んだ歌集であった。歌題ごとに歌を配置するものではなかったと考えたい。次に、実際に私撰集との他出状況を比較してみる。『校本』番号に従って下巻まで調査し、勅撰集と『続詞花集』までの私撰集を比較した。〔勅撰集〕古今集1059106310711072108110831086108710941095110311071118112311621172後撰集1049105010531068107310841088109110051088109111051110111311371156115711591170拾遺集921035465165210481097116011611169拾遺抄9210651652109711611168後拾遺集11217434855838511011712512613213814415917224527828328728829634637738947348550353155356558058659259760562262663563665370070571573877377577779679886086186486887789189390992092193493696696797697797910061024103211661186金葉二816182325355057607374879613114215716116416917418919222222923124324725526327127932032834535836537137237538739440440741741843445045246146446547247548248650050151253955958859460961562362865963366666767368368468868969272076477477881281481682682784184584785786290391393996596811471199詞花集9715315824025839554664164367869170271471775075110081034千載集22118152156181291298360385393505532544587599613677842906983〔私撰集〕古今六帖65110391042104510471048104510501053105810601064106510671072107310761077108010811083109110921094109510961098109911041105110711081109111111131114111711181119111111131114111711181119112011231125113211331153115511581160116911701172金玉651和漢朗詠6511169玄々集61158867新撰朗詠17753277586796710321081109411601169後葉集9711812815326049547154658764164367869170271471775075190310071034続詞花集283611812212815617718119119924927234836036842743743844145549553254468769370672774775376177282883486798798799210051223『古今集』、『後撰集』、また『古今六帖』等といった中古の歌集も見えるが、これらはすべて下巻末「証歌」部の歌である。「証歌」は除外して考える。題詠歌の類聚である『和歌一字抄』に、題詠が発達する以前の歌が取られ難いのは当然で、『拾遺集』までの入集は極めて少ないのはそうした理由に拠る。ここでも『後拾遺集』と『金葉集』の入集が圧倒しているが、しかし『詞花集』『千載集』の入集歌も少なくない。だが出典注記には『詞花集』が一首見えるのみで『千載集』は存しない。増補本系統には「裏書」や「新古今集」の注記を持つ歌もあるが、やはり『詞花集』の入集注記の増加や、『千載集』の入集注記は確認できない。注意したいのは、次の例である。雨中落花打聞長家卿春雨にちる花みればかきくらしみぞれし空の心ちこそすれ(二二)「打聞」と注記があるが『千載集』の入集歌なのである。後朱雀院の御時、うへのをのこどもひんがし山の花み侍りけるに、雨のふりければ、白河殿にとまりておのおの歌よみ侍りけるによみ