ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

『偽りの花園』(The Little Foxes, 1941)における奥行きの演出-アンドレ・バザンと表現の明白さを巡って-Folder 298/299:アーサー・クーバーによる修正稿第2稿(Folder 298はシーン159まで記載。共に年号・日付は不明。)Folder 300:ドロシー・パーカーとアラン・キャンベルによる最終稿(日付は1941年4月15日と記載。)Folder 301/302:最終稿以降に手を加えたと思われる脚本(年号・日付は不明。Folder 301の脚本冒頭には「W.W.」というサイン。おそらくワイラーによる署名と思われる。)(7)Box 22-Folder 303の撮影記録は全体を通したページナンバーが無く、撮影された日付とその日付の中でのページ数(たとえば1941年5月14日撮影の2ページ目など)が書かれている。そのためどの箇所を参照したのかを記すために、年号と日付を本文中に記載した。(8)『偽りの花園』における鏡の反映による奥行きは、これ以外にも多くの箇所で用いられている。本論は反映による奥行きに限定した論文ではないため、詳しく検討はしないが、簡単に列挙しておく。マーシャル氏との晩餐会の背景。オスカーに殴られたバーディが帰宅した後でキャルが室内を消灯していくショット。化粧をするレジーナのPOVで映される鏡。オスカーとベンを待つレオの見つめる鏡。(9)奥行きの演出を考える上で、グレッグ・トーランドの存在は欠かせないであろう。トーランドの奥行きの演出に対する貢献は、ボードウェル(Bordwell 1985,345-349)やバリー・ソルト(Salt 2009,257-258)らによって既に述べられている。撮影監督として、ワイラーやウェルズだけでなく、フォードやハワード・ホークスらの作品にも参加した。キーティングは、トーランドの奥行きの演出が同時代の写真技術からの影響を色濃く受けている、と指摘している(Keating 2010,222-243)。既に20年代にあったディープ・フォーカスを使用した写真撮影の理論的土台や、大恐慌の時代を通じて写真でストーリーを語る記録写真などが、トーランドの撮影に影響を与えたとキーティングは述べる。このような考え方は議論を急いだようにも思えるが、奥行きの演出にトーランドがどのような具体的影響を与えたのかを考察することは、ワイラーの演出を再検討する上でも今後必要であろう。(10)『孔雀夫人』の撮影監督はグレッグ・トーランドではなく、ルドルフ・マテである。引用文献・参考文献・参考サイトBazin, Andre, Qu’est-ce que le cinema? , Paris : Edition duCerf, T.I, 1958; edition definitive, 1975.( = 1970年、小海永二訳、『映画とは何かⅡ――映像言語の問題』美術出版社)( = 2015年、野崎歓・大原宣久・谷本道昭訳、『映画とは何か(上)』岩波文庫)Bordwell, David, Janet Staiger and Kristin Thompson, TheClassical Hollywood Cinema, New York: Columbia University Press, 1985.Bordwell, David and Kristin Thompson, Film Art: An Introduction, 7 th edition, New York: McGraw-Hill, 2004.( = 2007,藤木秀朗監訳、飯岡詩朗・板倉史明・北野圭介・北村洋・笹川慶子訳、『フィルム・アート――映画芸術入門』名古屋大学出版会)Bordwell, David and Kristin Thompson, Observations on filmarthttp://www.davidbordwell.net/blog/category/directorswyler/(2015年5月30日)Bordwell, David,“Sleeves”, 2007.http://www.davidbordwell.net/blog/2007/11/30/sleeves/(2015年5月30日)Keating, Patrick, Hollywood Lighting from the Silent Era toFilm Noir, New York: Columbia University Press, 2010.Mitry, Jean, Esthetique et psychologie du cinema 2 les forme,Paris : Encyclopedie universitaire,1965.( = The Aestheticsand Psychology of the Cinema, translated byChristopher King, Bloomington and Indianapolis, IndianaUniversity Press,1990)Salt, Barry, Film Style and Technology: History and Analysis,third edition, London: Starword, 2009.藤井仁子「世界は額縁を持たない――ジャン・ルノワールとのピクニック!」『Cross Section』vol.2、2009年、65-72頁ジル・ドゥルーズ『シネマ2時間イメージ』宇野邦一・石原陽一郎・江澤健一郎・大原理志・岡村民夫訳、法政大学出版局、2008年.ジャン=ルイ・コモリ「技術とイデオロギー」、鈴木圭介訳、『新映画理論集成②』岩本憲児・武田潔・斉藤綾子編、フィルム・アート社、1999年.97