ブックタイトルRILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

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概要

RILAS 早稲田大学総合人文科学研究センター研究誌

WASEDA RILAS JOURNAL(14)5212宮内庁書陵部蔵本(一五五・一〇八)Ⅱ《改稿本系統》国立公文書館内閣文庫蔵本(二〇二・六一)中間本系統(下巻のみ)架蔵本(井上宗雄旧蔵)三康図書館蔵本(五・一二三九)下巻増補本系統(上下巻)第一類宮内庁書陵部蔵本(一五〇・六五三)*(『新編国歌大観』・『校本』底本)川越市立図書館蔵本(四三三〇)(貴・十一)神宮文庫本(三・九一五)志香須賀文庫蔵日野資時本樋口芳麻呂蔵本国立歴史民俗博物館蔵本(田中穣旧蔵典籍古文書一五箱七三六)原撰本系統は草稿本系統(Ⅰ)と改稿本系統(Ⅱ)が存し、さらにⅠは二類にわかれる。草稿本から改稿本への改訂は清輔の手によると見られており、原撰本系統を中心に研究されてきた。原撰本は上巻のみの残闕本で完本が現存しないが(2)、一覧に掲げなかった大阪青山短期大学蔵本が原撰本系統の下巻に該当する可能性を残す(3)。中間本系統は下巻のみが現存する。こうした状況から『和歌一字抄』の利用は、後人の手が入っていない原撰本系統か、『新編国歌大観』に収載される増補本系統に依拠する形で進められてきた。だが、原撰本系統にも作者名等の誤りが多く、さらに注記に関してはより複雑な事情が存している。次に原撰本系統の諸本を中心に注記の問題を考えたい。三作者注記と出典注記『和歌一字抄』には作者注記と出典注記が付されている。次の図1のように、歌題の下に書かれているものを「出典注記」と称し、作者名の下に付されたものを「作者注記」や「詠者名注記」と呼び習わしている。基本的には注記位置の違いと注記の対象によって呼称を変えているのだが、注記の位置が両者の違いを決定づけているわけではない。図1では、「源師光」とある作者名下に「前蔵人之時詠之」と、詠作機会に関する注が記されている。こうした位置の異同は特に「已上」で纏める注記に甚だしい。図1内閣文庫蔵本出典注記には散逸歌集の書名が見える。これらについて井上宗雄、梁瀬一雄による検討があり(4)、蔵中さやかの研究が現在の水準を示す(5)。蔵中は、これらの注記は後代に付された可能性が高いとする。この注記はいつ頃付されたものであろうか。先にも触れた61(梅田注:『校本』七四番歌)の詠者名に付された「藤内大臣左大将」に、一つの考察材料がある。『公卿補任』の記事によれば、「内大臣」つまり実能は、仁平四年八月十八日左大将に任じられており、少なくともこの注記はそれ以降に付されたものとなる。『和歌一