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メディア・書物・注釈プロジェクト

メディア・書物・注釈・プロジェクト分担者 竹本幹夫

プロジェクト概要

本プロジェクトにおいては、早稲田大学図書館等、大学所蔵の文学・語学資料のデータベース構築及びその活用により、若手研究者を育成、研究活動に巻き込みながら、新たな本文研究、注釈研究を提示してゆく。また、注釈、書物、挿絵等についてのメディアとしての意義に関する研究の展開を期する。

プロジェクト計画

具体的なテーマとしては、以下の各項を立て、研究を推進する。
(1) 早稲田大学図書館古典籍データベースを用いた、新たな研究会活動のモデルを確立する。たとえば、『源氏物語』古注釈書『弄花抄』、山田美妙等の近代作家の自筆資料等々。単なるデータベース化作業でなく、それを真に早稲田の強みである学問的考証を通して、「古典遺産」として実質化していく。
(2) 早稲田大学図書館が計画している、web上で公開予定の「古典籍ジャーナル」(仮称)に、所蔵資料の調査・研究の成果を逐次発表する。
(3) 雑誌『早稲田文学』の総合研究を外国の研究者を結集して進め、目次のデータベースを追加構築する。
(4) 文学学術院所蔵資料(木下尚江資料など)を整理・研究し、データベース化して web上に公開する。

また次年度以降は、和歌文学研究・物語研究・謡曲研究の諸分野において、科学研究費による下記の研究をめざし、上記研究テーマと相互補完的に連携しつつ、大規模共同研究の実現に向けて、実験的研究を行う予定である。すなわち、当該研究においては、海外に未紹介の和歌文学作品、物語作品、及び謡曲と能楽論の本文研究を行う。

このうち和歌については、たんなる本文研究というよりは、『万葉集』以後中世和歌に至るまでの、黄金期の和歌作品・歌壇に関する研究成果を要約する作業を通じて、最先端の和歌文学研究の現状を海外に紹介し、海外研究者の研究を支援する態勢をも確立する。

物語については、海外未紹介の物語作品の本文研究のみならず、古注釈書の系統的研究を踏まえ、「源氏物語注釈書」の翻訳のための準備作業を行う。

和歌と物語からの派生分野として能を位置付け、謡曲の本文校訂に関する新たな凡例作りとそれに従った校訂本文の作成、世阿弥能楽論の本文校訂を行う。謡曲の表現の基本が和歌的表現であること、初期の能は各登場人物が物語を分担口誦することによって成り立っていたらしく、それが後々まで「語り物の二次的完成」と呼ばれる特殊な表現様式を能にもたらしている、と考えられることによる位置付けである。

上記諸分野の作品の世界を解明するために、各分担者が若手研究者による作業チームを構成し、海外のみならず、国内の研究者の協力をも適宜に求めていく。

(早稲田大学国際日本文学・文化研究所(WIJILC) News Letter No.1 2010.1より)