研究代表者挨拶
「世界と共創する新しい日本文学・日本文化研究」の出発に際して
研究代表者(国際日本文学・文化研究所長)
中島国彦(文学学術院教授)
期待される新しい日本文学・文化の世界的な研究・交流拠点
早稲田大学は、長期的な研究展望である「NEXT125」の一つとして、「日本学・日本文化の世界的な研究拠点」の形成のために、「国際日本研究機構(仮称)」の早期の設立をうたっています。「早稲田大学から世界に向けて日本研究を発信し、日本研究の世界的な拠点として内外の研究者を養成する」ことが求められているのです。「重点領域研究」は、そうした考えの延長として 2009年に制定されたものです。わたくしたちのメンバーは、早稲田大学、とりわけ文学学術院において、長い時間をかけて培ってきた日本文学研究、及びそれに連動する日本文化研究のさまざまな成果を活かしつつ、これまで個別に築いてきた海外の有力な研究機関及び研究者たちとのパイプをより強固なものにし、真に国際的と言いうる研究の展開をめざす計画を策定しました。幸いこの計画は採択され、新しい研究所「国際日本文学・文化研究所」(WIJLC)を組織し、活動を出発させることになりました。
わたくしたちは、その国際的な展開に見合う形で、これまでの伝統的な日本文学・日本文化研究の枠組みにとらわれずに、新時代に対応した方法と対象とを開拓し、日本文学・日本文化研究の再構築をめざしてゆきます。現在、日本文学・日本文化研究の新展開をはかるためには国際的な連携が不可欠なものとなっています。他方、早稲田大学からの国際的な発信が、日本文学・日本文化研究の国際的な活性化に対して重要な貢献をなしうることは言うまでもないことです。この研究は、「早稲田」と「世界」の強力な連携関係を構築することによって、新たな日本文学・日本文化研究の〈共創〉Co-Creationを期すものと言えましょう。
国際的な提携と発信の強化
早稲田大学の日本文学・日本文化研究は、国内的にはもちろんのこと、国際的にも確固たる地位を築いてきました。ことに近年では、アメリカのコロンビア大学、フランスのイナルコ(国立東洋言語文化研究学院)等、日本文化研究において世界の中でも指折りの大学・研究機関から厚い信頼を得ており、さまざまな学術及び教育上の共同の事業を展開してきています。今後は、21世紀における「研究のWASEDA」をになうために、こうした「強み」をより強固なものとし、これまでもつながりの深かったアジアをも含めた全世界へ向けて発信する体制を築いてゆきます。
研究の組織化と新たな展開
日本文学・日本文化研究は、個々のジャンル・時代別に展開してきたため、それぞれの領域での研究は進展してきましたが、総合性に欠ける「弱み」がありました。そこで、各種の研究・交流プロジェクトを推進することで、全学の日本文学・日本文化の研究体制の組織化を図ります。文学学術院を中心に、適宜学内の他学術院や研究機関と提携してゆくことで、この研究活動は、大きな「強み」として、飛躍的に円滑かつ効率的に、全世界に向けて発信されるはずです。そして、この研究分野において、対外的に大学全体を代表する窓口を形成したいと考えています。
わたくしたちは、5つのプロジェクトを設定し、それぞれ多くの人々の協力を得てそれを推進してゆきますが、3つの海外との連携プロジェクトは、2つのテーマプロジェクトと密接な連携をもちながら、まさに Transdisciplineのかたちで深まってゆくことでしょう。数年後には、そうした研究・教育・交流・発信の成果を皆様に見ていただけるよう、わたくしたちは今後も一致団結して推進してゆきたいと考えております。日本文学・日本文化に関心のある全世界の方々のご協力を願ってやみません。
研究分担者の構成
研究分担者
|
(早稲田大学国際日本文学・文化研究所(WIJILC) News Letter No.1 2010.1より)