現代・制度・都市プロジェクト
現代・制度・都市プロジェクト分担者 高橋敏夫
プロジェクト概要
本プロジェクトでは、近現代文学研究者と近現代史研究者とが共同して、文学や演劇映像などをふくむ文化の展開と、現実の環境の史的展開との関係を総合的、かつ国際的に研究する。具体的には、「制度」と「都市」をキーワードにして近代以降の日本文化の特質を明らかにすること、そこでの「日本」という表象・「アジア」という表象に関する新たな問題を提起すること、などである。
したがって、本プロジェクトは、「コロンビア・プロジェクト」「イナルコ・プロジェクト」「アジア・プロジェクト」「メディア・書物・注釈プロジェクト」の研究と関わり、それらを随時補完するとともに、全体をまとめあげる役割を担う。研究員は、本プロジェクトに関心を持つ多数の若手研究者らと、他のプロジェクトの研究に参加し、そこで得られた成果をも活用して本プロジェクト研究を推進する。
プロジェクト計画
初年度および次年度に計画する研究テーマは以下の三点である。
- 大衆文学誕生と「都市」の新展開とのかかわりをめぐる総合的研究。1920年代に誕生した大衆文学は、純文学が時代からの自律を志向するのに対し、時代と社会との深いかかわりを求めて自らを形成する。初期大衆文学の八割を占める「チャンバラ小説」は、同時代のなにを吸い上げ登場したのか――これを考察することに総合的研究の端緒を求めたい。
- 「日本」および「アジア」表象の成立と変容と現在をめぐる総合研究。「日本」のエッジであるとともに「アジア」のエッジでもある「オキナワ」の動向は、近現代をとおし「日本」表象に大きく影響してきた。とくに戦後のオキナワ文学の考察から「日本」(ヤマト)表象のありかたを浮彫にする。
- 現代都市伝説・神話とエンタテインメントとのかかわりをめぐる総合研究。エンタテインメントの最先端を走るライトノベル、携帯小説には、現代都市・メディア環境がうみだす恐怖や不安や快楽が充満している。なかでも突出する「ホラー」表象を手がかりに、都市とメディアの変容がもたらしつつある新たな言葉・感情・身体を考察する。
以上の三点をめぐって、研究員と若手研究者との勉強会、連続講演会や国際シンポジウムなども積極的に展開する。(早稲田大学国際日本文学・文化研究所
(早稲田大学国際日本文学・文化研究所(WIJILC) News Letter No.1 2010.1より)