UCLA国際ワークショップ&パフォーマンス “ACTING OUT”

 

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          左から Toquil Duthie UCLA准教授、多和田葉子氏、松永 美穂早稲田大学教授                                                                    

 2016年3月14日(月)から16日(水)にかけて、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)にて、作家の多和田葉子氏を迎え、松永美穂早稲田大学教授とともに国際ワークショップとパフォーマンス「ACTING OUT」(早稲田大学・UCLA共催)が催された。この催しは柳井正イニシアティブ グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクトの後援を受けた。また、参加者は両大学に所属する大学院生や学部生であり、彼らの出身国と地域は8箇所以上にわたる。

参加者は14日に自らがパフォーマンスで用いるテクストを選び、続く2日間で共通するテーマやパフォーマンスの方法に関する議論を重ねた。そして、16日にリハーサルを行ったのち、19時から21時に催された本番の舞台に立った。会場はUCLA Fowler Museum屋外に位置するAmphitheater(半円形、すり鉢状の舞台空間)である。

パフォーマンスは多和田氏、マイケル・エメリックUCLA上級准教授、松永教授の挨拶から始まった。多和田氏が自己紹介をし、エメリック上級准教授がそれを英語に訳すことに引き続き、自身も翻訳的な手法で自己紹介を行った。続いて松永教授がドイツ語で話し始め、多和田氏が日本語に訳していたところ、そこにエメリック上級准教授も加わり同じ内容を英語でも訳し始める。更に、スペイン語やタイ語話者も加わり、また、話者が会場を自在に歩き回ることで、言語の多数性が撹乱される空間が形成された。

続いて、参加者は自らが選んだ日本語文学を中心とした様々なテクストを朗読しつつ、テクストから喚起されたイメージを身体でも表現した。しかしここでも撹乱は起きた。中原中也『サーカス』、ユーディット・ヘルマン『幽霊コレクター』(松永教授訳)、『般若心経』、近藤ようこ『戦争と一人の女』(原作・坂口安吾)といった様々なテクストが取り上げられるうちに、〈文学〉とは何かということも非常に不確かに感じられてきた。

朗読パフォーマンスでの使用言語は英語、日本語の標準語、ドイツ語に限らず、スペイン語や中国語、タイ語、韓国語、あるいは日本の方言など様々であり、次第に多声的な空間が演出されるに至った。それは聴衆がそれまで経験したことのない空間であったに違いない。

当日はカリフォルニアらしい好天に恵まれ、予定通り屋外にて開催の運びとなった。すり鉢状の会場の正面には大型スクリーンが置かれ、その前に椅子が20脚用意された以外は、周囲の芝生や石べりに参加者・観覧者が自由に身を置き、催しを堪能した。夕暮れ時から日没までの情景を巧みに生かした、五感に訴えるパフォーマンスが繰り広げられた。