コロンビア大学からDDP中間報告(1)
日下 力
2月22日に日本を発ち、3月26日までの滞在予定で、ニューヨークのコロンビア大学にてダブル・ディグリー・プロジェク(DDP)に基づく集中講義を行っています。以下、その中間報告を日記風にお伝えします。
- 2・22
- 9時55分、ケネディ空港に到着。コロンビア大学の大学院生クリスティーナ・YIさんの出迎えを受ける。集中講義全体のお世話を戴いているのがシラネ・ハルオ先生、そのシラネ先生の依頼を受けて出迎えてくださったのであった。タクシーで50分、ミルバーンホテルに着く。付近の買い物に便利なお店の案内をしてもらい、昼食を共にする。ご両親が韓国より来られたとのことで、在日韓国人文学者の研究を志しておられるという。
- 2・23
- 朝9時30分、シホ・タカイ(高井詩穂)さんが諸手続きの援助のために、ホテルに来てくださる。シラネ先生の指示によるもので、東大教養学部出身の大学院生、ご主人が弁護士で、大学の寮に一緒に住んでおられる。浄瑠璃のなかでの女性像の変遷が研究テーマのよし。今年9月から、DDPにより、クリスティーナさんとともに早稲田で勉学に励むことになっている。
出向いた先は、まず大学の事務所。非常勤講師としての資格確認。次に、納税者番号取得のため、公的機関に向かおうとするが、同日中には手続きが無理と分かり、後日のこととする。大学図書館、講義の教室等を案内してもらい、シラネ先生の研究室へ。翌日の授業のために、前もって知らせてあったタキスト本文以外の資料をシホさんに渡し、受講生12人分のコピーをお願いする。
先生のご案内で、大学の高層棟にある食堂で昼食を取る。天気が良ければ見晴らしが素晴らしかったはずであったが、残念ながらこの日は雨天であった。 - 2・24
- 12時30分からの授業予定であったが、前の授業の使用許可が13時までとなっていたらしく混乱。12時45分からとなり、その待ち時間の間に学生の皆さんの自己紹介を受ける。
『保元物語』の為朝の英雄像の問題を中心に講義。持参していた鎧の部品の実物を、手にとってみてもらう。ヨーロッパの叙事詩における英雄像との異質性にも言及したものの、どれだけ説明しえたか、時間不足で不安が残る。予定の15時30分を10分ほどオーバー。 - 2・25
- シホさんに再びホテルに来てもらい、市の中心部に出かけて、公的機関での納税者番号取得の手続きを済ませる。昼食を共にする。夕方より雪となる。水を含んだボタン雪。テレビの画面に、Snow Shower の文字。
- 2・26
- 夜7時より中華料理店にて懇親会。雪解けの道を苦労して歩く。積雪は20センチ余り。学生の皆さんが代わる代わる隣の席に座り、自分のことを話してくださる。ドイツからの留学生ダニエル君は、9月から早稲田へとのこと、アルゼンチン出身のアリエル君は6月から、2年後の本格的留学の前に早稲田での授業を経験したく、渡日予定と聞く。中国からの留学生の方もいて、まさに国際的な環境の中にいることを実感。市内を歩いていても、様々な国から人びとが集まっていることが分かり、シラネ先生の、「アメリカは移民文化」という言葉が、素直に理解できる。懇親会はにぎやかに、11時まで続いた。
- 2・27
- アリエル君が早稲田で和歌の授業を受けたいということだったので、高松先生にメール、新年度の授業予定を知らせてもらう。
- 3・3
- 第二回目の講義。『平家物語』から「敦盛最期」「知章最期」「小宰相身投げ」「千手前」「重衡最期」を話す。最後に、『イリアス』との比較も一言。
アリエル君に、高松先生からのメール内容を紹介。 - 3・4、5
- メトロポリタン美術館は、セントラル・パークを横切って30分ほどの近さなので、2日間続けて通うも、全部はなお見切れず。館内にワイン・コーナーや食堂もあり、両日とも昼食はそこで。
- 3・7
- シラネ先生のご提案で、国文学資料館の調査のためにニューヨークに来ている立教大学の小峯和明氏と一緒に、モダン・ダンス(PAUL TAYLOR)を観る。皮肉を利かせたパロディ、それに戦争の重いテーマ。
- 3・10
- 第三回目の講義。漢籍受容の問題から、『太平記』への軍記文学の展開の問題、さらに『平治物語絵巻』を解説するという、盛りだくさんの内容で、時間を15分オーバー。
授業後、4月から8月まで、早稲田に来られるデビット・ルーリー先生を紹介される。古代文学、言語に関する研究をしておられる。奥様は日本の方ということで、4歳になるお嬢さんの写真が、研究室のあちらこちらに。 - 3・11
- 国文学資料館のメトロポリタン美術館調査団に同行、アジア美術部主任研究員の渡辺雅子氏のご好意による。これも、シラネ先生のご配慮から。
調査対象であった『平治物語絵巻』断簡については、そうではないであろうことを、意見として伝える。
以上、中間報告として、メモ日記帳から適宜抜書きしてみました。
3月12日