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コロンビア大学からDDP中間報告(最終)

日下 力

3・24
 最終講義を行う。芸能と軍記文学との関係を、という要望に従い、琵琶法師と盲女の語りの歴史的変遷を概説したのち、用意した平曲と瞽女の演奏のテープを聴いてもらう。最後は、盲女の語り物であった可能性の高い常葉の話について、その密度の濃い文学性を語って終える。5分超過。質問でさらに10分超過。休憩を途中で入れながら、毎回3時間を越える授業となった。
3・26
 13時のフライトでニューヨークを発ち、翌日15時、帰国。
3・28
 ニューヨークでお会いできなかったシラネ先生と、渋谷で昼食を取る。そのとき、学生諸君の授業感想文を見せられる。最終講義後の25日を締め切りにして、メールで提出させたものとのこと。その速さに驚く。みな、それなりに刺激を受けてくれたらしく、安堵する。今後、軍記物語の代表的な章段を、現代語訳から英訳して出版できないかとの相談も受ける。

 32日間のニューヨーク滞在、輻輳した社会を肌で感じ、百見聞は一体験に如かずと思うこと、しきりであった。受講生の優れた日本語能力と熱意にも、心動かされた。9月からは、コロンビア大学博士課程3年の4人が、文学修士の資格取得を目指して早稲田に来る。在日朝鮮人文学のクリスティーナ・イ、浄瑠璃の高井詩穂、近世における漢籍受容のナン・ハートマン、和漢比較のダニエル・ポッポの諸氏。日本の学生諸君や教員との交流の輪が、さまざまな局面で広がってくれれば嬉しい限りで、受け入れる側としてもそうした環境の醸成に意識的でなければなるまいと思う。