アジア・プロジェクト
アジア・プロジェクト分担者 高松寿夫
プロジェクト概要
歴史的に見て、日本の文学・文化がもっとも多くの影響を受け続けてきたのは、中国・朝鮮半島からであったことは、改めて言うまでもないことである。双方の影響関係は今なお活発で、新たな展開や局面をも見せている。当プロジェクトでは、過去の交流・受容の検証とともに、こんにちの相互交流の促進も模索する。これまでに築いてきた中国・韓国の諸機関・研究者との連携を一層密にし、必要に応じて随時、共同研究・シンポジウム・講演会等の学術交流の場を実現させる態勢が整っている。
プロジェクト計画
- 漢籍研究
近年の中国では、海外にのみ現存する典籍=「域外漢籍」の研究がさかんであるが、日本にはその対象となる典籍が特に集中して保存されている。中国側の研究成果は、「域外漢籍」を受容した当時の日本側の関心の所在を測るにあたって、重要な示唆となることが期待される。まだ充分な検討が施されなかったり、紹介すらされていない日本側資料は、仏教関係典籍を中心に少なくなく、それらの情報を提供しつつ、中国側の最新情報をも取り込むことで、双方にとって研究の進展が期待される。また、韓国で近年、続々と発掘・解読が進められている木簡に関する最新情報も、日本の漢字表記の歴史の解明に重要な手がかりとなりそうであり、情報収集と現地研究者との意見交換を計りたい。
- テキスト・データベースの充実
中国の諸研究機関では、すでにきわめて充実した古典籍のテキスト・データベースが公開され、世界各地の研究者に便宜を提供しているが、日本漢文の同様なデータベースの公開も待望されている。すでに一部は「平安朝漢詩文データベース」として公開しているが、「メディア・書物・注釈プロジェクト」との連携を図りつつ、信頼できる良質の日本漢文のテキスト・データベースの充実を遂げたい。また、中国側諸機関(北京大学など)から、既存のデータベース構築に当たってのノウハウの提供を受けて参考としたい。
- 招聘研究者による講演会
日本滞在中の海外の日本文学・日本文化研究者を招聘し、講演会をはじめとする、学術交流の機会を設定し、双方の最新情報の交換を積極的に行う。コロンビア・プログラムに関わっている欧米の研究者とアジアの研究者との交流の場も提供して行きたい。
(早稲田大学国際日本文学・文化研究所(WIJILC) News Letter No.1 2010.1より)