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瀬戸 直彦 教授

【略歴】
1978年
早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業
1981年
早稲田大学大学院文学研究科修士課程
フランス文学専攻修了
1987年
パリ第4大学博士課程修了
1987年
早稲田大学大学院文学研究科博士課程
フランス文学専攻退学
1988年
同大学フランス文学専修助手
1991年
同大学専任講師
1995年
同大学助教授
1999年
同大学教授

──研究内容
広い意味での文学といってもいいのかもしれませんが、文献学philologieとか古書体学paléographieというものに興味があります。具体的には、中世の南フランス語(オック語)で記されたトルバドゥール(12〜14世紀の抒情詩人)の作品の解釈と校訂(テクスト設定)が主な仕事で、羊皮紙で残された諸写本のテクストの中から、つまりヴァリアント(異文)の間から、さまざまの「正しい」読みを導きだすことに携わっています。写本をいかに読むかという問題を考えるうちに、パレオグラフィーという「歴史の補助学問」のひとつに足をつっこんでしまいました。1980年代に留学中、パリのEcole Pratique des Hautes Etudes(高等研究院)の第4部門(Histoire et philologie)で開講されているJean Dufour先生の写本を読む授業(Paléographie et codicologie)に4年間通いましたが、これがいかに貴重な経験だったかを今になって痛感しています。

 

──主な著書・訳書・論文
【論文】(2005年以降のなかからいくつか)
・« Li vus que Nicodemus fist: saint Vout et saint Genet », in Actes du Colloque de Hiroshima du 26 au 27 mars 2004 à l’Université de Hiroshima, Hiroshima, Keisuisha, 2005, pp.87-116.
・「ペイレ・ヴィダルの「パレスチナの歌」-baiser volé のモチーフを中心にして-」、in Etudes Françaises(早稲田フランス語フランス文学論集)、t.14, 2007, pp.1-33.
・「真昼の悪魔とアッケディア」『比較文学年誌』(早稲田大学比較文学研究室)、t.45, 2009, pp.1-20.
・« Le grondement de la montagne qui accouche d’une souris(Marcabru, PC 293,19: version courte)», in La France Latine, t.148, 2009, pp.125-144.
・「マルカブリュの“椋鳥の歌”2部作について」『早稲田大学文学研究科紀要』、t.56-2, 2011、pp.14-21.
・« Le vocabulaire féodal dans Gaucelm Faidit: sur jove senhoratge (PC 167, 52, v.43)», in L’Occitanie invitée de l’Euregio. Liège 1981 – Aix-la-Chapelle 2008, Bilan et perspectives. Actes du neuvième Congrès International de l’AIEO, Aix-la-Chapelle, 24-31 août 2008, éd. par Angelica Rieger, Aachen, Shaker, 2011, pp.519-531.
・「人生の四時期―オジル・デ・カダルスとフィリップ・ド・ノヴァールの場合」『ヨーロッパ中世の時間意識』(甚野尚志・益田朋幸編)、知泉書館、2012年5月、pp.143-165.
・「『秘中の秘』覚え書き―その養生術(中世オック語)について―」『早稲田大学文学研究科紀要』、t.58-2, 2013, pp. 35-56.
【翻訳】
・ベルナール・セルキリーニ『フランス語の誕生』、白水社、1994、(三宅徳嘉氏との共訳)
・ジャン・ヴザン「古書体学と歴史学―シナイ半島のラテン語写本」、in『西洋中世史セミナー講演報告集』(佐藤彰一編)、名古屋大学大学院文学研究科西洋史学研究室、2000年、pp.136-150.(佐藤彰一氏との共訳)
・『フランス中世文学名作選』(松原秀一・天沢退二郎・原野昇編)、白水社、2013、 pp.57-98.(トルバドゥール10品、トルヴェール6作品の翻訳)
【著書】
・『トルバドゥール詞華集』、大学書林、2003年

 

──専門以外に興味のあること
趣味としては、写真と映画でしょうか。写真はとくに、古いライカのレンズで撮るのが大好きです。ミュンヘン会談の頃のズマール5センチと、盧溝橋事件の頃のクセノン5センチの撮り比べ、もっと以前のヘクトール7.3センチや、戦後すぐのズマレックス8.5センチ(最近キャノンの85ミリF1.5がラインナップに加わりました)の微妙なボケ味が何ともいえません。でも望遠は重くて持ち出すのが億劫です。A型から取り出した旧エルマーの描写、製造番号1844001以前のズミルクス50ミリの繊細な線にもはまっています。ローライ・フレックスの6×6版(クセノタール F3.5)もいいですね(カメラについては僕には偉大な軍師がついているのです)。
映画は仏文の周辺に専門家が多いので、小声で言いましょう:小津安二郎(『東京暮色』『彼岸花』)、成瀬巳喜男(『乱れる』『乱れ雲』)、ロベルト・ロッセリーニ(『イタリア旅行』『ストロンボリ』)、アキ・カウリスマキ(『マッチ工場の少女』『浮き雲』)、キシュロフスキ(『ふたりのベロニカ』)、エルンスト・ルビッチ(『ニノチカ』『街角』『天国は待ってくれる』)、マーヴィン・ルロイ(『イーストサイド・ウエストサイド』)、ニコラス・レイ(『危険な場所で』)が好きです。黒澤明『静かなる決闘』での、ひねくれ看護婦の千石規子、相米慎二『お引っ越し』での、子供時代の田畑智子は圧倒的な迫力です(あれ,フランス映画がない!)

 

──学生へのメッセージ
けっきょく外国の文化・文学を研究するということは、語学の基礎がなくては話になりません。フランス語フランス文学コースに入ったのであれば、まずフランス語を徹底的に学んでください。朝倉季雄『新フランス文法事典』(白水社)を通読するような気構えが必要です。それとともにぜひ、ラテン語・ギリシア語など古典語も学んでおくことを勧めます。幸い早稲田には古典語のクラスがたくさんあります。学生時代に数人しか登録していない古典語の授業に出ていたとき、私はじつに充実した時間を過ごせました(これが大学で勉強することなのかと)。自戒をこめてつぎのホラーティウスのことばを記します:Inter spem curamque, timores inter et iras, omnem crede diem tibi diluxisse supremum.(希望と心配、不安と怒り、そんなものが渦巻くなかで、今日も陽がのぼったがこれが最後の日なのだと思いなさい)