卒業生の声 Vol.12
【アパレルメーカー】久保田
希代香
Kubota Kiyoka
仏文コースを選んだからこそ、
好きなことが見つかり、学ぶ楽しさも知り、
希望の仕事をするための就職ができました。
──なぜ仏文コースを選んだのですか?
私、なぜかみんなに仏文っぽくないとよく言われるんですが、実は高校の頃から英語が好きで、指定校で文学部に行くと決まった時から、仏文か独文に入ろうと決めていたんです。なぜなら文学部って理系とは違ってこれがスキルだという押しが弱いじゃないですか。だから英語以外にもう一つできるものが欲しくて語学をやろうと思ったんです。独文ではなく仏文を選んだのは、なんとなくフランス語の方が良いかなぁというくらいの理由です。
──仏文コースを選んでどうでしたか?
もちろん、すごく良かったです! 仏文は小さくて教授たちとも密だし、ちゃんと自分の勉強ができる空間が整っています。だから自分の好きなことは何だろうと考えることができたし、見つけることができました。もし仏文ではなく、もっと大人数のコースになんとなく進んでいたら、たぶん自分の好きなことも見つけられず、勉強もしないまま遊び呆ける方に走っていたと思います。
──自分にとって好きなことは何でしたか?
仏文に来て、みんなと同じことをしなくて良いんじゃないかと気づけたことが大きいですね。だから好きなことは何だろうと真剣に考えました。そして洋服に関するモードと卒論でも書いたマグリット・デュラスだと分かったんです。もし仏文に進んでいなければ、アパレルメーカーに就職しようなどと考えなかったと思います。早稲田大学をでたらこの道というような偏ったイメージをつくり、とにかく大手企業を目指して就職していたのかもしれませんね。
──卒論にマグリット・デュラスを選んだのはなぜ?
モードはこれから先も仕事を通して生涯ずっと考えていくテーマです。でもマグリット・デュラスについては、今でなければ熱心に考えることはきっとない。学生時代に出会ったもの、積み重ねてきたことの集大成として、卒論にまとめようと思ったんです。実は卒論にマグリット・デュラスを選んだ理由にも繋がるのですが、3年生の時、全国の大学生協から選ばれた5名のうちの東京代表として、5年に一度ニューヨークの国連で行われるNPT(核兵器の不拡散に関する条約)再検討会議に、日本の被爆された方々の団体をサポートするために参加したんです。
──NPT再検討会議に参加して何を感じたのですか?
広島、長崎はもちろん西日本と東京との核に対する教育の差に驚きました。そしていろいろな被団協の方と会って一緒に活動した経験を持ち帰り学生に話すのですが、その時の温度差にも驚きました。東京の学生はまったく違うんです。この時の経験が卒論「デュラス、忘却への抗いと愛のトポス−『ヒロシマ・モナムール』をめぐってー」を書くきっかけになっています。『ヒロシマ・モナムール』は、日本人の男性とフランス女優との広島での一日限りの情事を描いた映画です。
──仏文を選ぼうという後輩へのアドバイスは?
仏文は、もともと好きなこと、研究したいテーマをもっている人にとって、ものすごく良い環境です。良い意味でも悪い意味でも個人主義な学部だから、自由に好きなことを極められると思います。もちろん教授はそんな学生にきちんと寄りそってくれます。でも私みたいに何が好きなのかまだよく分からないという人でも、仏文でならきっと好きなものを見つけることができます。なぜならそんな学生にも教授たちは惜しみなく力を貸してくれるからです。好きなことを見つけ、しっかり勉強してみると、遊びとは違う楽しさがあることが分かります。私はその楽しさを仏文だから体験できたのだと思っています。