
卒業生の声 Vol.33
【早稲田大学大学院】金 秀娟
Kim Suyeon
単純に学問をするだけではなく
仏文はそれを超えた
“人生の学び”がある場所です。
──仏文に進むことを決めていましたか?
日本に留学しようと決心したのも、早稲田大学を選んだのも「映画」が理由だったので、演劇映像コースに進むつもりでした。だからフランス語を学んだのも1年生の時が初めてだったんです。でもコロナ禍でオンラインだったのにも関わらず、選択基礎演習のミシェル・フーコーの『マネの絵画』を読む授業で先生と仲良くなり、仏文の魅力をたくさん聞いたことで「仏文なら私の好きなことを自由にできる」と確信がもて、仏文に変えました。
──仏文を選んでよかったことは?
人との縁ができたことです。自分が見ている世界の解像度が上がり、フランス文学を学びながら自分が本当に関心をもち情熱的になれることを見つけることができました。仏文は自分の可能性を無限に試してみることができるし、言語や文学だけでなく美術、演劇、ファッションなど広く学ぶことのできる授業も多いので、自分の好きなものが見つかるはずです。仏文は自由で優しい場所であり、学問を超えた人生の学びがある場所でもあります。
──仏文の先生、学生はどんな感じですか?
先生方はとても優しく良い意味で個性が強いと思います。辛かった時に私を救ってくれたのは先生方の言葉だし、無事に卒業まで辿りつくことができたのも先生方のおかげです。先生方にこれほど支えていただけるとは思ってもいませんでした。一緒に授業を受け同じ課題に取り組んだ仲間は私にとって「戦友であり同志」です。だからといって無理に仲良くしなければと負担に思うこともなく、みんなちょうどいい距離感で、親友もできました。
──卒論は何をテーマに書いたのですか?
ハンガリー出身の作家でありながらフランス語で『悪童日記』を執筆したアゴタ・クリストフを取りあげました。母語ではない言語を使用して執筆活動したクリストフの人生と文学世界に魅了され、韓国からの留学生として外国語を使って生活をしている自分だからこそ共感できるのではないかと思ったからです。ハンガリー動乱でクリストフが経験した心理的葛藤とアイデンティティーの混乱を「場所」と「言語」という視点で論じてみました。
──大学院では何を研究するつもりですか?
卒論で書いたアゴタ・クリストフのように母語ではない言語で創作活動を行う「越境作家」や、ネイティブな言語ではなくフランス語で生きている「フランコフォニー」に興味があり、研究したいと思っています。文学という学問は、人の想像力を育み、他人を理解する能力を与えることで世界に貢献できると考えているので、大学院でもそんな力を秘めた作品を見つけ、文学で世界を変えるための一助となるように研究を続けたいと思っています。
──どんな人が仏文にくるといいと思いますか?
私もコースを選ぶのに最後まで迷いました。そんな私が今自信をもって言えるのは「学業も大学生活もとにかく楽しみたい!」「居心地のいい場所で自分が興味をもてるものを見つけたい!」と思っているなら、迷わず仏文です。確かにフランス語をちょっと頑張らなければなりませんが、それ以上に仏文で得られる知識は未来に繋がるし、仏文で得られた出会いは素晴らしい。誰がきても、何を学ぶにしても、楽しめるのが仏文だと信じています。