Vol.32
卒業生の声 Vol.32
【写真作家】鳥海 佳希
Toriumi Yoshiki
何か他にやりたいことがある。
だったら仏文に進んで
二足の草鞋を履くべきです。
──仏文に進むことを決めていましたか?
僕は早稲田実業の出身で、進路決定の際に自分のやりたいことに一番合っていると思って文学部に入っただけで、仏文に進むなんてまったく決めていませんでした。しかも入学してすぐに五月病みたいになってしまい、後期はまったく大学に行っていないんです。コロナ禍になったこともあり、オンラインで授業を受けながら、映像関連の制作会社で約1年働きました。さすがに両立は難しく、このままで2年生になれないと思い、会社を辞めたんです。
──なぜ仏文に進んだのですか?
ほとんど授業にでていないから成績が悪く、コースを選ぶというより半自動的に仏文に決まりました。でも、それが良かったんです。仏文には自分が興味をもって突き詰めていることがあれば、どんなことでも必ずアプローチする方法があったからです。それが僕の場合、仕事を始めて関わった映像であり、その後興味をもって始めた写真表現でした。結果、それをテーマに卒論を書くことになったんですから何が切っ掛けになるか分かりません。
──どんな卒論を書いたのですか?
卒論のタイトルは『写真表現と印象派』で、フランスで印象派が登場したのが写真の生まれた時代だったので、写真が絵画に与えた影響と絵画が写真に与えた影響、そして現代写真の絵画との関係性がどのように変化していくのかを論じました。仏文の先生方はやわらなか雰囲気を醸しだしていますが、卒論で関わった鈴木先生は、実は鋭さをもっていて、ハッとするような意見もいただき、やさしいだけじゃないんだと驚きました。
──仏文ならではの魅力はなんだと思いますか?
自分のやるべきことを自分で決定できることだと思います。僕が仏文で先生にあれやこれや言われたことはほとんどありません。少なからずすべてに選択肢があるんです。僕にはそれが合っていました。コースの生徒数がそんなに多くはないので、密な関係になりすぎたら大変だろうなと思っていましたが、お互い干渉しすぎない感じで、ほどよい距離感がとても居心地がよかったですね。たぶん仏文なら人間関係で問題が発生する可能性は低いと思います。
──卒業後はどんな仕事をするのですか?
就活もしなかったし、会社に就職することもしません。CMやインターネットCM、ホームページやYouTubeに流れる動画をつくることは映像の会社を辞めてからもちょこちょこやっていたので、その仕事を個人でやりながら写真表現をする作家として売れるようになりたいと思っています。今は写真家のカタチもいろいろで、SNSで影響を及ぼすようなインフルエンサーのような仕事もやっていきますが、やはり目指すのは作家です。
──コース選びで迷っている後輩へのアドバイスは?
仏文ならやるべき学習のウェイトをある程度、自分で操作できます。翻訳課題とかはそれなりにありますが、それで他のことに手がつかなくなるレベルではありません。僕は一点集中型のかなり不器用なタイプですが、それでも勉強と映像や写真との二足の草鞋を履けていたし、他で履いていた草鞋が仏文のための草鞋にスイッチすることも経験しました。なりゆきで仏文の僕が後悔していないんだから迷っているなら仏文です。これに尽きます。