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後藤 渡 講師

【略歴】
2013年
早稲田大学大学院文学研究科修士課程
フランス語フランス文学コース修了
2022年
ソルボンヌ大学(旧パリ第四大学)
博士課程修了
博士(フランス語学)

──研究内容
ジョルジュ・ペレックという作家を対象として博士論文を書きました。彼はEのない小説、ページから始めて、章を追うごとにベッド、部屋、建物、街路と面積を広げ空間に至る作品、建物の断片を100マスに割り1マスごとに章を割り当てて小説を書き、その中で真剣なおふざけと形容できる様々な試みを行いました。母音を落として小説を書く作家と聞くと、お読みの皆様は彼を変な人だと思うかもしれません。しかし、彼の作品はプレイヤード叢書(日本で言うと岩波文庫と同じ位置にある叢書)に入っています。アメリカでは、ペレックがフランス文学科の博士論文の主題となる作家のトップテンに入っており、世界でも多くの人が研究する作家といえるでしょう。加えて、現代アートの作家(クリスチャン・ボルタンスキー)に影響を与え、彼の出自(両親がポーランド系のユダヤ人)からホロコースト研究の文脈で語られるなど、ペレックは文学の領域を超えて人を惹きつける作家といえます。私は、彼のメディア(テレビ、ラジオ、映画)での活動に焦点を当て、技術への興味が次第に媒介への関心に変わっていく過程を、刊行されているテクストとメディア作品、未刊行のテクスト(手稿、タイプ稿)、映像、音源から詳らかにし、テクストとメディア作品の相互性を明らかにしました。

 

──主な著書・訳書・論文
・「災厄の後のエクリチュール―ジョルジュ・ペレックから出発して―」、『震災後に考える 東日本大震災と向きあう92の分析と提言』、早稲田大学出版部、2015年、835-842項。
・「映画版『眠る男』をみる」(『文学研究科紀要 第61輯』、早稲田大学文学研究科、2016年、161-173項。
・「ジョルジュ・ペレック『撮影された生活』における記憶の投影、沈黙、「永遠のものと束の間のもの」」、『文学研究科紀要 第64輯』、早稲田大学文学研究科、2019年、259-273項。
・« Une lecture de L’Éternité de Georges Perec », Waseda Rilas Journal, No.9, 早稲田大学総合人文科学研究センター, 2021, p.51-64.
・« Variations autour du sonnet en « H » de Métaux : le “jourd’hui manchot” », 『早稲田大学大学院 文学研究科紀要 第67輯』, 早稲田大学文学研究科, 2022, p.197-221.

 

──専門以外に興味のあること
まず、好きな音楽と映画にかかわるものを列挙すると、1930年代のトミー・ドーシー、オスカー・ピーターソンの伴奏、ビル・エヴァンス(特に最初のトリオ、エディ・ゴメスとの円熟期、最後のトリオ)、フレッド・アステアの音域の狭さ、コール・ポーター、アーヴィング・バーリン、ジーン・ケリーの多幸感、物まねをするエラ・フィッツジェラルド、晩年のブラームス、シューベルト(特に「岩の上の羊飼い」)、管楽器のための曲を書くホルスト、イタリアを旅した後のチャイコフスキー(例えば、「イタリア奇想曲」、「ピアノ三重奏」)、モーツァルト(特に「春への憧れ」からはじまる最後の一年)、『マクベス夫人』以降のショスタコーヴィチの意地の悪さ、ウディ・アレンの回顧癖、シャブリエ、バッハ、30年代から50年代のミュージカル映画によくみられるようなご都合主義の結末(どんな状況でもなんとかなってしまう点)。
お金に余裕のある時は、鉱物標本を買っています。パリには風景大理石(パエジナ石)専門のお店があり、値段の書かれていない石の中から、貧乏な学生でも買えるパエジナ石を買っていました。今はもうやめたのですが、鉱物の採集を日本でもフランスでもやっていました。ノルマンディーの海岸では瑪瑙の塊や晶洞を拾いました。
おもちゃみたいなクロスバイクを買ってから、80キロ程度のサイクリングをしています。フランスでは、平日の朝から晩まで研究していた反動で、週末、大気汚染のひどいパリを離れて、自然の中でランドネをしていました。決められたコースを何時間、あるいは何日かかけて歩くのが普通のランドネですが、私は駅を起点と終点にし、IGNの地図を使い、20キロから50キロ、パリのあるイル=ド=フランス地域圏とそこに隣接する地域圏(特にヴァロワと呼ばれた地域やノルマンディー)の自然や廃墟を歩きまわっていました。ヴァカンスにはブルターニュやノルマンディーの海岸、マルセイユのカランクを歩き、ヴェルコールの2000メートル級の山、ボルヴィックのロゴになっている山、アマルフィ半島の山に登ってました。日本に帰ってからも、休日の午後にサイクリングと徒歩登山をするために奥多摩や奥武蔵の山に登っています。

 

──学生へのメッセージ
教員としては、フランス語を勉強してほしい、そして、本を買って、読む、卒業しても出来るだけそれらの習慣を続けてほしいと思います。しかし、個人的には、学部生時代は、何かに集中しなければいけない時間もはたから見て無駄に見える時間もすべて貴重な時間だと思うので、時間を大切に過ごしてほしいです。

 

──進級希望学生へのメッセージ

https://wcms.waseda.jp/em/655186e7257ba?authkey=1699842384682&user_id=1321471&lg=ja