就職活動体験記(東京都庁職員)

松岡美聡(フランス語フランス文学コース4年)

 

私は今年東京都Ⅰ類Bという公務員試験を受け、来年度から東京都庁職員として働くこととなりました。

私が公務員を志したのは3年生の秋頃で、勉強をスタートしたのもその辺りでした。

当初は、子供好きということもあり絵本の出版社など民間企業での就職を希望していました。しかし思い返すと、2年生の夏休みに一ヶ月ほどフランスに行った経験が公務員を志望したきっかけの一つとなりました。

日本は現在、低下し続ける出生率を前に子育てしながら女性が働き続けられる環境づくり、待機児童解消など新しい方策をあげています。フランスでも同様に1994年までは出生率は1.65まで落ち込んでいるのですが、そのあと保育園の整備や男性の育児参加など様々な取り組みにより2012年現在は2.01とヨーロッパ内でも高い水準に回復しました。

このような情報から私もフランスに行く前には、フランスは社会制度が整った国であるというイメージを持っていました。しかし、実際に行って印象に残ったのは路上にいる物乞いの人の多さでした。中には、障害のある子供を抱きかかえながらお金を乞う人の姿もありました。また、電車の中では子供が“お金を下さい”と書いた紙を渡してきて、お金をねだられるといった場面にも遭遇しました。

日本ではなかなか見ることのない光景ですが、フランスではそういった人の姿がかなりあります。私は衝撃を受け、社会制度が整ったはずのフランスでなぜ?と頭が疑問でいっぱいになりました。

帰国後、大学での講義のなかでフランス人の先生から、フランスが移民問題やロマ人の問題を抱えていること、先ほど述べた物乞いの人たちは多くがフランス国籍を持たない移民であるということも知りました。日本でも労働力の不足という観点から移民受け入れを訴える声もあります。今後日本で移民の受け入れが進めば、近い未来、東京でもパリで目にしたような子連れの物乞いの姿を見ることがあるかもしれません。

こういったことを知る中で、社会制度の充実とは何だろう、私にはこれから何ができるだろうと考えはじめました。

そして就職活動が近づくにつれ、モノより「仕組み」をつくる仕事をして、誰もが住みよくなる社会制度を整えたいと考えるようになりました。中でも東京都という大きな影響力のある自治体の中で誰もが住みよい街を作り、これから日本が直面する問題に立ち向かって行きたいと思い、東京都庁を受けることにしました。

 

公務員試験の勉強を開始してからは、同じ仏文コースの友人、そして先生方にとても励まされました。図書館にこもりきりの時間が続く中、仏文での授業は視野が広がる機会となり、またフランス文学を深く学ぶ友人の姿など勉強の内容は違えども、私自身も試験突破に向け頑張ろうと良い刺激をもらいました。

卒論の担当の瀬戸先生を始め、多くの先生・友人に励ましや応援の言葉をもらったおかげで無事に内定がいただけました。ありがとうございました。今後は、卒論もがんばります!笑

(その他の個人的な目標としては、フランス語の語学力を向上させて2020年の東京オリンピックで活躍できる人材になりたいです)

 

仏文は自由な雰囲気で、それぞれの学生が自分のやりたいことにしっかり向き合う時間を得ることのできる環境が整っています。また、実際にフランス人の先生とお話しできる機会が多いというのは語学力向上だけでなく、海外の問題について実感を持った話を聞くチャンスがあることだとも思います。語学や文学が好きという方だけでなく、海外の問題に興味がある人にもぴったりのコースでしょう。

 

卒業まであと少しとなってしまいましたが、残りの大学生活も仏文で有意義な時間を過ごしたいと考えております。今後ともどうぞよろしくお願いします!

2014.10.8