Que reste-t-il de nos amours ?

こうした中で、一番気に入っているのは「ロイク・ラントワーヌ」だ。これは chanson pas chantéeを演じるロイク・ラントワーヌ本人と、ウッドベースを弾くフランソワ・ピエロンから成るユニット名である。個性の豊かさと個人の確かさを兼ね備えた、まさにこの時代ならではの二人組で、ポピュラー音楽の定石を無視した「歌われない歌」は、たたき上げのスラマーたちと比べても遜色はない。それどころか、フランスの声の本物を聞くことができる、いわば無形文化財のような語りの芸である。場末のカフェのカウンターで聞くともなしに聞いていた男たちのつぶやきや、地下鉄の車内を回る物乞いの叫びや、深夜の路上にたたずむホームレスの独り言が、雑然と思い出される。シケモクと安酒に焼けた喉の奥から、五臓六腑から絞り出された、あの声だ。「自分の中に人生を踊らせるための音楽がもう多くなくなってしまったってことさ。若さなんてもう、世界の果てで、真実の静けさの中でくたばっちまった。自分の中に十分な量の熱狂がなくなってしまったというのに、いまさらどこへ出かけるっていうんだ。真実とは、終わることのない断末魔。この世界の真実は、死。死ぬか、嘘をつくか、どちらか選ばなければならない。おれはといえば、自分を殺すことはどうしてもできないでいる」(セリーヌ『夜の果てへの旅』より)。

 

ルペンの甥が大統領になり、あらゆる物事が二極化=アメリカ 化してゆく今日、私たちが好んだものから何を残せるのだろう? トレネの歌では、若かりしころの写真が一枚残っているということだった。ここでは、最後に ある歌詞を掲げておきたい(真ん中の… では、メロディーが伸びて少し間が開く)。

 

Bien qu’j’aime tes coups… de téléphone
Bien qu’j’aime les sous… pires que tu m’donnes
Bien qu’j’aime les fesses… tins qu’tu concoctes
Faut que j’te laisse, on reste potes

Adieu à celle que j’ai… mais j’aime ailleurs
Le goût du nouveau semble meilleur
Le goulu goût du nouveau cœur

C’est bien la haine… nième fois qu’on s’laisse
Suite à une peine… urie de tendresse
On est trop cons… stament en froid
C’est pour de bon les bouts cette fois

Adieu à celle que j’ai…
On fait pas face… cilement tout l’temps
La vie qui passe… tiament s’étend
Ce sont les ans… nuits qui polissent
Ta vie trop lisse de ma main glisse

Adieu à celle que j’ai…
J’veux pas qu’tu fanes… attises mon nom
J’veux pas qu’tu rames… masses les tessons
J’veux pas qu’tu cries… anthème la tombe
Celle où ci-gît notre ancien monde

Adieu à celle que j’ai…

 

曲名は「Adieu」演奏は「Drôles de beauxgars」。1993年にグループ名を冠したアルバムでメジャー・デビューした後、行方がわからなくなってしまった伝説の四人組──マヌーシュ・ジャズでハリー・コニック・ジュニアが歌う、というしかないような芸風の──である。音信不通は実に残念だが、そのおかげで、この言葉のおもしろさと独特の響きは、長い年月を経てようやく、僕の中に定着したのかもしれない。