フランスのラジオが好きな理由
私はニュースを聴きたかったので、フランス・アンフォは格好の素材でした。「報道専門」というだけあって、本当に一日中ニュースばかり流していて、速報も含めてほぼ15分間隔でだいたい同じことを伝えたりしているわけで、こんなものをよく一日中聴いていられるな、と傍から見たら思われるかもしれません。でも、ニュース・フランス語初級者には、この「繰り返し」が何よりありがたかったのです。猛スピードで話される慣れないフランス語を一回で聴き取るのはまず不可能です。ところがフランス・アンフォなら、録音の労をとる必要もなく、ただつけておきさえすれば一日のうちに何度も同じことを言ってくれます。最初はわからなかった単語も2回3回と聴くうちにだいたいの綴りがわかるようになります。その場で勘を頼りに辞書を引いて意味を確認したあと、またしばらくすると同じニュースが流れてきます。もちろん聴いているだけでは埒があかないので、なるべく新聞や雑誌などの文字媒体も併せて見ます。といったふうに同じ作業をしつこく続けていると、内容の理解が少しずつ進んでいることの手ごたえが次第に得られるようになり、ひとつのニュース(3分たらずの短いものですが)のだいたいの意味がわかったときには、なんとも言えない達成感を味わうことができるのでした。
こんなふうに書くと、本当にフランス・アンフォしか聴いていなかったかのように思われそうですが、こんな私でも一応は適当にいろいろな局をザッピングしていました。週末には総合局のEurope1や RTLの週間ヒット・チャートを楽しみにしていましたし、若者向けの番組でくだらないおしゃべりをしながらゲラゲラ笑うフランス人の話しぶりなど、意味はわからなくとも雰囲気だけ味わったりするのも気分転換になりました。フランス・アンフォも四六時中コチコチの客観報道ばかりやっているというわけではなく、要所要所でゴシップ的な話題や小ネタ的なものを混ぜ込んでいて、へーと感心させられたり、クスリと笑わされたり。たとえば、セゴレーヌ・ロワイヤルが毎年恒例の夏のバカンス水着姿を今年もまたパリ・マッチに激写されプライバシー侵害と朝からなにやら怒り心頭らしいがよく見れば娘と一緒に浜辺で笑いながらストローでスイカを吸ってゴシップ記事満載の超大衆雑誌Peopleを読んでいた、とか、ミッテラン元大統領がツール・ド・フランス開催中ある日突然姿を消しどこにいるのかと思えば一般観衆に混じって選手の姿をカメラにおさめておりそのとき手にしていたのは日本製のカメラだった、とか、ゴルバチョフ元ソ連大統領が今度ルイ・ヴィトンの広告キャラクターに起用されたが以前にも一度ピザ・ハットのスポット広告に出たことがある、などなど。
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幸いにもフランスのラジオは、いまやそのほとんどがインターネットで無料ダイレクト配信されているため、まさしくこの瞬間にフランスで流れているのとまったく同じ内容の放送を、日本にいながらにしていつでも聴くことができます。おかげで私は大好きなフランス・アンフォをいまもここですぐに聴くことができますが、かつてその言葉に感じたあの「時間的な遠さ」はもう感じなくなりました。それだけ私の耳がフランスにおけるアクチュアルなものに、ほんの一端にすぎないとはいえ、なんとか近づけたということでしょうか。
下に「ラジオ・フランスRadio France」というポータル・サイトのURLを張っておきます。適当に好きなところをクリックして、試しにいますぐ聴いてみてはいかがでしょうか。
【ラジオ・フランス】http://www.radiofrance.fr/(ほかにもいろいろあります)