ルイ・ド・フュネス──愉快な小さいオジサン
また、ルイ・ド・フュネスといえば忘れてはならないのが『Le Gendarme』シリーズです。南仏のリゾート地サン・トロペの国家憲兵が、ビーチのヌーディストを取り締まったり、UFO出現騒ぎを捜査したりするドタバタコメディで、ド・フュネス演じる憲兵クリュショの同僚たちやスピード狂のシスターなど、脇を固める登場人物も曲者ぞろいで愉快です。そのほか、『Les Aventures de Rabbi Jacob』(1973)(邦題『ニューヨーク→パリ 大冒険』)や『L’homme orchestre』(1970)もおもしろいです。『Les Aventures de Rabbi Jacob』は、人種差別主義者の実業家ピヴェール(=ド・フュネス)が、某イスラム教国の革命家と彼を亡き者にしようとする暗殺者集団のトラブルに巻き込まれ、暗殺者たちの手から逃れるために、ユダヤ教のラビと入れ替わり、パリで追跡劇をくりひろげるというもの(最後は政治的事件が解決するだけでなく、ピヴェールの人種的偏見もなくなり、めでたしめでたし)。『L’homme orchestre』では、ルイ・ド・フュネスは、女子ダンス・スクール(?)をスパルタ式に経営するエヴァン・エヴァンスを演じています。彼のもとでは門限、食事制限はあたりまえ。恋愛なんてもってのほか。ところが、スクールのピアニストをやっている甥に隠し子騒動がもちあがり、エヴァンスは生徒たちの目から赤ん坊を隠そうとてんやわんや…。ポップな歌やダンスがふんだんに挿入されており、プチ・ミュージカル仕立てとなっています。
ルイ・ド・フュネスに出会ってからというもの、私はフランスへ行く度に彼の出演作のDVDを買うのを楽しみにしています。作品は膨大な数で集めるのは大変そうですが、楽しみはつきません。みなさんもぜひ、愉快な小さいオジサンの世界に足を踏み入れてみませんか。